次に、IR、カジノ運営組織構築の工程表(モデルケース)について考えてみましょう。工程表は、海外の先行事例と比較し、十分な時間的余裕を持って設計しました。
まず、事業者(コンソーシアム)は、ソフトオープンの36カ月前から、IR全体の運営体制整備、組織構築の計画を策定します。都心部のIRの従業員数は、施設全体で1万人以上、カジノ部門で2500名ほどです。計画策定においては外国から先行採用したシニアマネジメント、経験豊かなコンサルティング会社などを通し、その知見を活用します。
カジノ部門の役職員の採用プロセスは、ソフトオープンの18~24カ月前に開始します。採用は上流から下流の順に進めます。上流のスタッフが下流のスタッフの採用、教育トレーニングをサポートします。初期フェーズにおいては、シニアマネジメントチーム(20名ほど)、現場管理職(500名ほど)の多くが経験豊かな外国人となり、時間の経過とともに日本人の比率が拡大することになる見通しです。
むろん、現時点では海外のカジノで経験を重ねる日本人スタッフ(100名以上)の多くが帰国し、強力な戦力となる可能性があります。カジノ業界では各職種の仕事内容が世界的に標準化されており、人材の流動性は高いです。また、カジノ業界に特化したヘッドハンター、リクルートエージェンシー、求人求職用の業界標準のWebサイトも存在しており、それらを活用できます。
現場管理職を確保した後、ソフトオープンの6カ月前から、対顧客サービスを担うディーラー(2000名)を採用します。ディーラーは原則、日本人となる見通しです。ソフトオープンまでの6カ月とソフトオープン期間の合計約1年間、ディーラーは徹底的な教育トレーニングを受けます。その際、現場管理職がディーラーの教育トレーニングをサポートします。以上の工程は、事業者のプロファイル、資本構成によらず、共通です。
最後に
世界の先進国では、シンガポールを唯一の例外として、自国資本がカジノ構築、運営の主体を担うのが基本です。シンガポールは都市国家であり、世界第3位の経済大国である日本とは異なります。
第9回(日本のカジノは高収益が約束されている)の最後で述べたように、日本のIR、カジノの事業化は、経済条件や経験ノウハウ獲得の環境において、世界でも前例がないほど、好条件に恵まれています。日本ではコンセッション(免許)そのものが高収益を保証します。超低金利の環境下、コンセッション(免許)を得た事業者(コンソーシアム)は容易に資金調達(都心部では5000億円~1兆円など)が可能です。日本の事業者(コンソーシアム)が海外市場から「カジノ部分の経験ノウハウ」を調達する環境は整っています。日本企業はIRを実現する政策目的を真剣に考えるべきです。逆に言えば、政策目的を十分に理解した日本企業のみがコンセッション(免許)を獲得できるのです。
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