まずは奥様のケースですが、T.O.さんは「給料はさほど変わらないからよいだろう」という、若干、短期的な視点で良しあしを判断し、そのような説得をされているのでしょうが、奥様の視点は違うのではないでしょうか。
一般的には「目先の給料はそうかもしれないけど、どれだけ安定したものなのか」「長期的に考えた際のメリット、デメリットを本当に考えて判断しているのか」「小さい会社だからこそのストレスや激務などに本当に対応できるのか」「後ろ向きな理由での転職なのではないか(=逃げなのではないか。ここで逃げて大丈夫か?)」といった、より長期的な視点や、そもそも論として、T.O.さんの意図を図りかねているのかもしれません。
前提が共有されているか
よく「あうんの呼吸」と言いますが、「おい、アレちょうだい」でわかってしまう間柄もあれば、「アレじゃわかんないよっ!」となる関係もあります。その違いは何でしょうか(なお、「まぁ、それはアレだからね」「そうよね~」というおばさんの会話は、本当に通じ合っているのかが筆者にはわからないため、ここでは除外します)。
どのコミュニケーションでもそうですが、「前提が共有されているか否か」で説明の要・不要は変わってきます。上記の例でいえば、「アレ」の対象物が前提として共有されているのか否かによる違いです。
余談ばかりで恐縮ですが、私が以前、頻繁に通っていた立ち食いそば屋には「ど~も~」と言いながら入って来る私以上のヘビーユーザーがおり、その客が券売機で食券を買っている瞬間から店の人が客の注文を用意し、客はそのまま食べてまた「ど~も~」と帰っていく、という光景を何度も見ました。それもお互いの前提、すなわち何を食べるのかが共有されている例ですね。交わす言葉は「ど~も~」×2と「らっしゃ~い」「あざっす~」だけです。
何が言いたいかというと、T.O.さんと奥様の間で「仕事に関する前提や価値観がずれている」から、会話がうまくかみ合わないのでは?ということです。極端な話、「大企業のような安定した環境がいいよね」と言い続けていた、またはそういった価値観を共有していた中で、突然「やっぱベンチャーだな」と言い出したら、さすがに相手も心配になるでしょう。
そうでなくとも、日頃から仕事に関してT.O.さんとして何を優先するか、職業上の将来の夢は何か、といったことを、奥様と丁寧にコミュニケーションしているかどうか。
「やりがいと成長を求めて、20代はできるかぎり苦労する環境に自分を置いて修行したい」といった価値観と、前述の価値観とでは、“唐突感“が異なり、奥様の反応も違ってくるはずです。
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