「本田圭佑だけじゃない」J選手が起業する深い訳 北海道でワイン事業や一般社団法人設立…

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2018年には仁木町に1ヘクタールの土地を購入。ブドウ畑を作って栽培を始めたが、その前段階として一般農業法人設立という関門があった。伯父に作曲家の都倉俊一氏を持つ東京都渋谷区出身の都倉にとって、農業はまったくの門外漢。法人設立も行政書士の力を借りながら1つ1つクリアしていった。

土地を購入して森を開墾、農地へ転用するところから開始(写真:本人提供)

「仁木町には『ワイン特区』が設けられ、新たな農業法人であれば大規模農園でなくても補助金が出る制度があった。それを活用しようと書類をそろえ、手続きを進めました。そのうえで約200万円を投じて土地を入手し、農地への転用作業を進めたのですが、森だった場所をイチから開墾する形だったので想像以上に大変だった。費用も400万円ほどかかりましたね。

大掛かりな作業を経てようやくブドウを植えるところまでこぎつけた。僕自身も練習・試合の傍ら、時間を見つけて足を運びましたけど、すべてが勉強の連続でした」

2019年末にはクラウドファンディングで事業資金集めを実施。783人の支援者から合計576万1942円が集まった。目標金額は200万円の設定だったから、3倍近い資金を確保できたことになる。その後、ワイン醸造に本腰を入れたが、自身の畑のブドウをワインにするには最低3年かかるため、外部からブドウを仕入れ、今年には「KAERIZAKI2020」というブランド名で商品化。5月に自らオンラインストアを立ち上げ、販売をスタートさせた。

「これまで6クラブでプレーしてきた自分はたくさんの応援をいただいてきました。都倉賢という1選手を継続的に支持してくれたファンもいれば、各クラブのサポーターもいた。その中に『チャレンジし続けている都倉賢を応援したい』と考える人がどのくらいいるかをクラファンを通して改めて可視化できたのは大きかったと思っています」

引退後を見据えたビジネス戦略

もともとSNSでの発信に積極的だった都倉は現在、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムの合計フォロワー数が約11万人に達している。それはJリーガーの中でず抜けた数字。「自分は大きな財産を持っている」と再認識できたことも、今後への自信になったようだ。

「肉体を使って稼ぐサッカー選手はいつか限界が来ますけど、人的資源は先々の人生やビジネスで大きな財産になる。実際、僕自身もワイン販売で初めて2万円の事業所得を得られたときの喜びは本当に大きかった。それが月10万、20万と増えていけば、引退後の人生を見据えての安心材料が増えますよね。今はまだ自己資金を回収するフェーズには入っていませんが、自分のブドウ畑で取れるブドウから作ったワインを売れるようになるまでに、会社の基盤をより強固にする必要がありますね。

そのためにワインの価値を高め、単価を上げられるようにすることが肝心です。それと同時に購入者数・リピート回数を増やすことも考えています。その一歩となるのが、10月からスタートした『都倉ワイナリークラブ』。毎月1万5000円の会費で3本のワインが届き、オンラインワイン会やメンバー限定のオープンチャットに参加できるなどの特典もついてきます。そうやって楽しんでくださるメンバーの方を増やせれば将来の見通しも明るいと感じています」

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