ドラマは良かったけど、劇場版になったらちょっと長くて、面白くなかったねと言われるのが一番腹立つなと思って。何とかテレビドラマと、劇場版のいいところというか。劇場版にもいきすぎず、テレビドラマにもいきすぎず。その合間のいいところを狙えればなと思っていました。
食卓を囲むしあわせを教えてくれる
――このドラマや劇場版で観た料理のシーンは非常に印象に残ります。後で作るときにも、このドラマのことを思い出してしまいそうなぐらいに印象的だなと思ったのですが、ドラマと一緒に映すことで、料理の作り方が伝わりやすくなったという効果はあると思いますか。
よしなが先生がもともと描かれているマンガのレシピは、僕もドラマの撮影に入る前までにたくさん作りましたけど、一番は簡単だということなんですよね。僕はそれほど料理をするわけじゃないですけど、それでも割とおいしく、時短で、簡単に作れてしまう。劇場版でもローストビーフの料理シーンがありましたが、あれも(鍋の中で)4回ひっくり返すだけなんで、誰でもできる。
アクアパッツァも難しいことはないですよね。ただ材料を入れて火をつければいいだけ。リンゴのキャラメル煮も、砂糖を入れてリンゴを煮込むだけ。おいしそうに見えるんだけど、実はとても簡単だということがミソで。あとは、めんつゆを入れれば何でもうまくなる(笑)。簡単なのにおいしいところを見つけてくる、よしなが先生がすごいなと思いますね。
――簡単でおいしいというのはこの作品の中でのテーマでもありますよね。
シロさんは家計を2万5000円で収めることを目標としている人なんで。どうしても凝ったものは高くなりますからね。小日向さんみたいに、高い調味料や、高い肉を買うことはなく。そうではないものでおいしく作れるというのが魅力だと思います。
――この作品は誰もが身近に感じるような、小さなしあわせを描いていて。それが見てる人にもしあわせを与える作品だと思うのですが、世の中がそういう作品を求めているということもあるのでしょうか。
ケンジはとても感情豊かな人で。食べたら本当に声を震わせ、身体を震わせておいしいねと言って。ふたりはちゃんと作る役、洗う役という役割分担もできてるし、相手のことを思いやっている。あいつが好きなものを今日は作ってやろうとか、今日は遅くなるから待っていようとか。明日は仕事がないから、ニンニクいっぱいのものを作ってやろうとか。ふたりがちゃんと相手のことを思って普段の生活を送っているんだということが、料理を通して垣間見えるなと思って。
自分の家を顧みると、じゃあ自分の奥さんに今日のご飯は本当においしかったと言っているかというと、そういうことをきちんと言えている人は多分あまりいないのではないかと。今はコロナ禍なんでご飯を家族で食べることが多くなったと思うんですが、その前までは深夜に帰ってくる人も多かっただろうから、家族みんなで食卓を囲むということもなかったかもしれない。だからそういうささいなしあわせが、本当にぜいたくなことなんだということを、このふたりが気付かせてくれるんだな、とあらためて思いますね。
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