――劇場版の料理シーンはどうでしたか。
劇場版のほうがちょっと大変でした。30分だと、1回の料理がサクッと入って気持ちいいんですけど、映画だと料理が4回ぐらい出てきますから。今回は結構、ふたりが問題を抱えながら料理に入るので。その前のシーンは何だったっけ、ということが多々あるだろうという懸念はありました。料理のシーンがなければ話としてわかりやすいんですけど、料理も主役のひとつなんで。前後の話を途切れさせないようなバランスは考えましたね。
――料理の部分で、テレビドラマとここが違うといった点はありますか。
テレビドラマと違うところでいえば、シロさん以外が料理をするところですかね。例えばケンジとふたりで、わちゃわちゃ言いながら、ぶり大根を作っているところであったり。小日向さん(山本耕史)と佳代子さん(田中美佐子)と一緒に料理を作るというところが、今までテレビドラマではなかったところですかね。
あんなに狭いキッチンに3人も立つことはないだろうし、3人でやれることはあるんだろうかと思って。演出コンテを描いているときにも、ひとりが料理をしているときに、あとのふたりは何をしているんだというのが気になっていました。
ボーイズラブものではなく料理マンガ
――とはいえ、あの3人のやりとりは、ほほえましくて良かったです。料理のシーンに関して、原作を意識したというところはありますか。
原作はもっと料理の分量が多いんですよね。よしなが先生と話したときに、「これはBL(ボーイズラブ)ものじゃなくて料理のマンガなんです。『クッキングパパ』と一緒なんです」とおっしゃっていて。『クッキングパパ』はお父さんでしたけど、こちらはゲイのふたりが料理を作っているだけなんですと。よしなが先生はそういう考えだったんだ、料理が先だったんだと思って。
だから原作通りにやると料理がメインになってくるんですよね。ただ料理のほうがメインになると、ドラマとしては成立しなくなるんで、そこの比率は逆転してますね。
――例えばテレ東のドラマでいうと「孤独のグルメ」のように、食べることを中心に置くようなやり方もあるかと思います。しかし「きのう何食べた?」の場合は、しっかりとしたドラマの中に、料理の部分もしっかりと見られるようなドラマになっていました。その辺のバランスは中江監督が考えたんですか。
脚本が安達(奈緒子)さんからあがってきたときに、その配分を決めるということですかね。料理のシーンが長いから切ってくれというお願いはよくしました。
――今回の劇場版で心がけたことはありますか。
先ほども言いましたが、もともと30分のテレビドラマで歯切れのいいものが2時間になったらどう見えるんだろうかと。2時間やったときに、だるいものになるんじゃなかろうかという懸念があって。脚本の段階で、よくあるハリウッドの三幕構成(「設定」「対立・衝突」「解決」)のようなセオリーにのっとって、もっと映画的に作ったらどうかという案もあったんですよ。
例えば「正月スペシャル2020」(2020年1月1日に放送)のときは、1時間半ですけど3話仕立てでした。そういうふうに、(磯村勇斗演じる)ジルベールの話とか、いろいろな話に分けてはどうか、という案もありました。しかしいろんな話し合いを経て、元はテレビドラマが人気だったわけだから、やっぱりあれをベースにしよう、という話になったときに、自分の懸念としては、それがだるく見えないかということでした。
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