料理シーンを重視「きのう何食べた?」の舞台裏 監督が語る「人気マンガ映像化」の苦心とこだわり

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――キャスティングも含めて、原作ファンからの評価は高かったように思うのですが。原作をどのように実写化しようとしたのでしょうか。

これは役者陣とも話したことなんですが、実際に生身の人間が演じると、どうしても感情が出てきてしまって、マンガとはまた違ったものになる。それをマンガに近づけましょうか、それともマンガとは切り離してやりましょうか、という話し合いをしました。でも、原作と違うといった批判があっても、それは人間がやるものだからしょうがない。だから恐れずにいきましょうということになりました。

ただ、これは内野(聖陽)さんもよく言うことなんですが、自分はマンガと違う、勝手なケンジを演じてしまったんだと。原作のケンジは細いし、厳密に言うと一緒ではないんですよね。僕もなるべく原作を意識しないようにして撮ったのですが、それでも原作通りだねとか、原作に近いと言われるのは不思議だなと思っていました。

ふたりのしあわせな雰囲気が出ていた

――伝わってくるものが原作と一緒というのもあるのではないでしょうか。

見終わった後の、しあわせな読後感みたいなものは守ろうと思っていたので。そこが良かったんでしょうね。シロさんとケンジ、ふたりのしあわせな雰囲気が出ていたので。

料理シーンがこの作品の大きな魅力のひとつだ ©2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 ©よしながふみ/講談社

――本作は料理の見せ方がポイントになると思います。中江監督はサントリーやローソンなどのCMで、食品にかかわる映像なども手がけられていますが、料理の見せ方についてのこだわりはどうだったんでしょうか。

CMでも料理のシーンは、もう数え切れないほどやっています。いわゆるシズルと呼ばれるシーンには、ある作法というか、こういうふうにこの角度で、こういう光で撮ればおいしく見えるという決まり事みたいなことがあるわけです。CMならそれでいいんです。その商品を買ってもらわないといけないので、わずか1秒ぐらいで、肉がジューッと焼けてバターが溶けるといった表現でいいんです。

しかし、映画ではむしろ、そういうシズルではなく、料理の工程を見せるということが大事。気合を入れたシズルがずっと続くのはけっこうつらいんですよ。思った以上に途中でおなかいっぱいになるし、飽きてしまう。そうすると話の本線とどんどん違うことになっていくので、なるべく日常の中で、おいしそうに見せるラインを探そうと思いました。

――中江監督の中には、料理のシーンがどのぐらいの割合で、ドラマのシーンがどれくらいの割合で、といった目安はあるんですか。

ドラマのときは30分で、料理を作るシーンが1回入ってたんです。それまでにふたりに問題が起きて、食べた後に争いをするとか、食べる前にけんかするとか、それで食べるのが仲直りだったりと、いろいろパターンがありましたが、あまりにも料理のシーンが長すぎると、おいしそうということに気が取られるんで、そこは注意しました。

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