「日本はもっと外国映画の撮影に協力してほしい」という言葉は、海外の映画人からしばしば聞かれる。実際、過去に『ワイルド・スピード X3 TOKYO DRIFT』『新宿インシデント』『ブラック・レイン』など数多くの外国映画が日本で撮影されたが、漏れ聞こえてくるのは日本で撮影をすることの難しさや苦労、もっと協力してほしいといった嘆きの声ばかりだった。
そんな日本を横目に、韓国や台湾などの近隣諸国は、ハリウッド映画をはじめとした海外映画の大型プロジェクトの誘致を積極的に進め、大きな経済効果をもたらしてきた。かつて東京都の石原慎太郎元都知事が、その任期中に「銀座でカーチェイスを」とぶちまけ、「東京ロケーションボックス」というフィルムコミッションを立ち上げたことがあったが、観光立国を提唱する日本にとって、海外の大型作品を誘致するための土台作りは急務とされていた。
そんな中、内閣府は「大型映像作品ロケーション誘致の効果検証調査事業(外国映像作品ロケ誘致プロジェクト)」を立ち上げ、日本における海外からの大型映像作品の撮影ロケーション誘致がどのような経済効果をもたらすのか、実際に海外から大型映像作品を誘致し、その効果を調査することとなった。そしてその第1弾の調査作品として、東京、大阪、兵庫、茨城など日本の各地で大規模ロケが行われたのがハリウッド映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(全国公開中)である。
内閣府の調査によると、同作にはおよそ9600万円のインセンティブ(支援金)が支払われることとなり、ロケ受け入れ時からの「直接効果」は19億6600万円、ロケ終了後から作品公開等までの「間接効果」も含めた総合的な経済効果は668億4200円と試算されている(2020年3月に発表された実施報告書での数字)。この施策の背景にあったものは何なのか。本プロジェクトで「ロケ誘致活動・効果測定」を担った特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッションの関根留理子事務局長に話を聞いた。
日本でのロケが進まないケースが多い
――『G.I.ジョー』についてお話を伺う前に、日本で撮影される海外作品の現状について教えてください。
ジャパン・フィルムコミッション(JFC)は、日本のフィルムコミッションであり、全国で活動している約120のフィルムコミッション(地域活性を目的に、映像作品のロケ撮影をスムーズに行うための支援をする主に自治体が行っている団体)がメンバーになっているネットワーク組織でもあります。
日本のみならず、海外からの問い合わせもあり、ハリウッドからも年に数回お話をいただきます。しかし、なかなかうまく進まないことが多い。『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』も、主人公のバックグラウンドも含めて、やはり日本で撮りたいという制作の方たちの気持ちがすごく伝わってきたんですが、「日本ではいろいろと難しいよね」という話があったのは確かでした。
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