国が海外映画作品の「ロケ誘致」に乗り出した理由 「G.I.ジョー」が誘致プロジェクトの第1号案件に

✎ 1〜 ✎ 145 ✎ 146 ✎ 147 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――日本で撮影するのは難しい、というのは具体的に言うとどういったことでしょうか。

イメージが先行している部分はあります。実際に撮影をする前の段階で、「東京では人通りを止められないから無理か」、みたいにあきらめてしまうことが多かったりします。もちろん渋谷を3日間止められるかといえば無理ですが、例えばニューヨークのタイムズスクエアを止められるかと言ったら、簡単ではなく、できても時間はすごく限られている。何でもできるわけではないというのは海外もそうなんです。

主人公は忍者。そのため制作側は日本での撮影が不可欠だと考えた ©2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. © 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

ただやはり「日本で撮影は難しい」というイメージは海外に広がっていて、トライするまでいかなかったというのがひとつ。あとはインセンティブ(税金還付や助成金などの撮影支援)の問題が大きい。日本のフィルムコミッションがスタートしたのは2000年ごろからなので、ここ20年ちょっとはずっとインセンティブがないことに苦しんできました。

これは地方自治体ではどうにもならない話なので、何とか国にそういった予算がとれないかという話をずっとしてきましたが、なかなか前に進んでいません。特にお金の問題に関して言うと、ハリウッド(のメジャー)クラスの作品は大きな経済効果があるので、プロジェクトを誘致したいという国がたくさんあります。しかし、私たちには何の持ち玉もないので、同じ土俵には乗ることもできませんでした。そういうことでたくさんの大きなプロジェクトを逃し続けてきたという背景があります。そこら辺が実際に難しいと感じるところですね。

「ブラック・レイン」のロケがトラウマに

――イメージでいうとやはり、日本ロケが行われたにもかかわらず、撮影協力がほとんど取り付けられずにトラブル続きだった『ブラック・レイン』のモデルケースをきっかけに、ハリウッドに広がった悪評も大きかったのかなと思います。くしくも『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』も『ブラック・レイン』と同じパラマウントの配給ですが、最初はパラマウント側も日本ロケは大丈夫なのか、という懸念があったと聞きました。最終的には本作のプロデューサーが上層部を説得して、日本ロケが実現。上層部も本作を見て、日本ロケに満足したという話も聞いております。

それは強いと思います。実際にイメージだけでなく、文化の違いという部分は確かにあります。撮影の許可申請においても、他国だとフィルムフレンドリーという感じで、撮影という行為や文化に対して寛大な国が多いと思うんですけど、日本はどうしても、根回しの文化なので、ちゃんと順序立ててやらないと難しい。できるかどうかわからないですが、検討させてくださいと答えたのち、何カ所にも許可をもらって、ようやくできるということが多いと思います。

でもそういったところが海外の方からすると、何で今すぐにイエスかノーが言えないんだというジレンマがあるみたいです。彼らは決断が早いですから、ここで決められないなら、もうやめますということもあります。

――石原都知事の時代には「東京ロケーションボックス」という撮影支援団体が設立されましたが、東京の撮影はやりやすくなったのでしょうか。

東京が撮影しづらいというイメージがあるかもしれませんが、最近で言うと映画『翔んで埼玉』などは、都庁の前の道路を封鎖して撮影が行われました。ああいうのも東京ロケーションボックスがやっています。すごく頑張ってたくさんの作品を支援しているのですが、海外のようにトップダウンというわけにはいかないですね。

それでも順序立てて、少しずつできることが増えていったというのが、フィルムコミッションがこの20年近く地道に活動してきた成果だと思うんです。東京も今では、ちゃんと順序立ててやれば、できることがすごく増えています。普段からたくさんの映画やドラマの撮影も行われていますので、全国的にも理解が深まっていると思いますし、そうした積み重ねが実績につながってると思っています。

次ページ政府が乗り出した経緯
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事