2015年10月30日、ルーマニアの首都ブカレストで発生したクラブ「コレクティブ」内の大規模火災。27人が死亡し、180人が負傷する大惨事となったが、その後大やけどを負った重体の患者が次々に亡くなっていく。その原因を追及していくと、製薬会社や病院、そして政府や権力へとつながっていく衝撃的な癒着の連鎖が明らかになる――。
10月2日より公開の映画『コレクティブ 国家の嘘』は、命よりも利益や効率が優先された果てに起こった国家を揺るがす巨大医療汚職事件の闇と、それと対峙する市民やジャーナリストたちを追ったドキュメンタリー映画だ。
命の危険を顧みず真実に迫ろうとするジャーナリストたちの奮闘を通じて、世界が直面する医療と政治の関係性、ジャーナリズムが抱える問題などに真っ向から迫っており、ドキュメンタリーで映画でありながら本年度アカデミー賞のルーマニア代表として選出。国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たした。そのほか、世界各国の映画祭で32の賞を獲得し、50ものノミネートを果たしている。
地道な調査報道を続けるジャーナリストを追う前半から一転、映画の後半では熱い使命を胸に就任した新大臣を追うなど、異なる立場から大事件に立ち向かう人たちをカメラで捉えたのは、世界各国の映画祭で上映され数多くの賞を受賞した『トトとふたりの姉』のアレクサンダー・ナナウ。今回はそんなナナウ監督が目撃した、ジャーナリズムの奮闘ぶり、そしてその矜持について話を聞いた。
興味を持っているのは個人
――2014年に発表した『トトとふたりの姉』もそうですが、ナナウ監督の作品には、社会が見放してしまっているものに対する視線があるように感じたのですが。
そうですね。僕が興味を持っているのは個人。つまり個人が社会を形づくるのか、それとも社会が個人を形づくるのかという問いかけに興味があって。そういうことを突き詰めると、アウトサイダーと呼ばれる人が興味の対象となってくる。それは人と違う生き方をしている人だったり、社会に形づくられることを拒否する人々。もしくはそうした抵抗を通して周りの人々に影響を与えることができる人。そういう人物にとても引かれている。
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