1000円超の「高級海苔弁」驚きに満ちた味の秘密 系列「スープストックトーキョー」との共通点

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海苔弁は家庭でつくる弁当の最高峰であるというのが我妻氏の持論。高校生のときに食べた母親の海苔弁は冷めていてもおいしかった。しかし1980年代、「ほっかほっか亭」が誕生して以来、一般認識として、「温かさ」が弁当のおいしさの大きな部分を占めるようになった。コンビニで弁当を購入し「温めますか?」と尋ねられる度に、我妻氏は「弁当の本質とは何か」について考えを巡らせたという。

最終的に至ったのが「おいしさは物理的な温かさではなく、心の温かさである」という結論だ。

「受験生ならカツを入れるし、新婚ならでんぶでハートを描く。このように作り手の気持ちが伝わってくることがおいしさにつながっているんです。また海苔弁も、安さが売りというステレオタイプがあります。しかし、私の思い出の中にあるような、家庭でつくる弁当の最高峰としての海苔弁を追い求めたいと思いました」(我妻氏)

こだわり抜いたのが、弁当の主役となる海苔

目指したのは、広く販売されているような食欲を満たすだけの“弁当”や、ステレオタイプの“海苔弁”へのアンチテーゼとしての海苔弁。

ブランドではないが、吟味された食材を用い、一つひとつていねいに手作りする。容器もプラスチックは避け、懐かしさを感じさせる自然素材を採用した。

こだわり抜いたのが、弁当の主役となる海苔だ。有明産で上位1%と言われる最高級海苔を使用。初摘みの新芽でやわらかく、青のりが混ざる海域に育ったことから、特有の香りがするのが特徴とのこと。

海苔は有明産の上位1%と言われる最高級海苔を使用している(撮影:梅谷秀司)

この香りは広告の役割もしてくれるほどだそうで、店舗で海苔の上からしょうゆを塗る際、ふわっと立ち上る香りににつられて自然と周囲に客が集まってくるのだという。

こうして同社が新たに提案した海苔弁は、1日に2000〜3000食を販売する、大ヒット商品となった。東京駅の弁当販売数ランキングでは「海苔弁 海」が2位とのこと。ちなみに1位はシュウマイ弁当とのことだ。海苔弁山登りはさらに展開を拡大。2021年12月には品川駅にもオープン予定だ。

このように見てくると、海苔弁山登り大ヒットの理由は、誰にとってもなじみ深い商品ながら、既存のイメージを塗り替えるほどのインパクトを与えたことにあるように思われる。

こうしたブランド創出の土壌となっているのが、同社におけるスープストックトーキョーを軸にした多角的な運営だ。ここからはさらに、スマイルズという企業の核となっているブランド、スープストックトーキョーについて説明していきたい。

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