300万円でパン屋をプロデュースする男の正体 変わったネーミング、店舗ごとに変えるレシピ
コロナ前から盛り上がってきていた高級食パンブームだが、コロナを経てさらに加速の勢いを見せているようだ。レジャーも外食も制限され、毎日の普通の生活の中でちょっとした“非日常”を感じたいというニーズが高まってきたためだろう。
高級食パンの専門店として、有名どころでは「銀座に志かわ」、「乃が美」などが挙げられる。前者は110店舗、後者は239店舗を展開するチェーンで、いずれも和風の由緒を感じさせるブランド名、シンプルなロゴなどから、パンそのものの素材感や高級感が伝わってくる。
変わった店舗名にサイケデリックなデザイン
一方で、これらとは一線を画すイメージで売り出しているベーカリー群がある。「考えた人すごいわ」「許してちょんまげ」など、パンとはあまり関係がなさそうな、少々変わった店舗名にサイケデリックなデザインの店舗が全国各地に現れ、話題となっているのだ。
これらは、今の高級食パンブームの黎明期から先端を走ってきた、ジャパン ベーカリー マーケティング(以下JBM)社長の岸本拓也氏プロデュースによる店舗。同氏によるベーカリーは現時点で約350店舗にまで広がってきている。
プロデュース店舗のデザインは、岸本氏が自身を表現しているというそのファッションにも似て個性的だ。しかし一方でこれらの店舗の看板商品である食パンは、こだわりの素材を活かしながらも優しい甘さ、しっとりした食感で老若男女に好まれる味となっている。
同氏のベーカリープロデュース法とはどのようなものか。そして、なぜこのベーカリー群が今日本で人気となっているのだろうか。
岸本氏がベーカリープロデュースを始めた理由は、自身が2006年から始めた、ベーカリー業の経験にあるという。
「私はもともとホテルマンとして、広報やブランディングを担当していました。そうした目でベーカリーを見ると、パン屋というのは地域を彩る大切な存在であると思えます。実は、好まれる味というのは地域ごと、風土によって少しずつ違います。そして主食であるパンをつくるベーカリーというのは、町を象徴するものなのです。しかし一方で、日本のベーカリーは画一的に見えます。店舗名一つとってもフランス語であったり、『麦』の文字が使われているなど、似たようなものが多いですよね。もっと遊び心をまじえながら、パン屋を違った形で表現できないかな、と考えたのが始まりです」(岸本氏)
また近年の傾向として、ベーカリーというと「職人」のイメージが強くなってきていることにも疑問を覚えた。実際、長年の修行が必要であるなど、開業への道も限られている。自らベーカリーのオーナーとして同業者と接していると、誰もが職人として、同じような道を歩んでいると感じた。
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