300万円でパン屋をプロデュースする男の正体 変わったネーミング、店舗ごとに変えるレシピ
当初は同じ沿線の新百合ヶ丘への出店を検討していたが、「小さな店が大きなところで勝負しようとしてもうまく行かない」とのアドバイスを受け、現在の立地に出店。オープン当初は大きな反響があり、遠方からの客も来店したが、現在では客数が当初の半分程度に落ち着いている。地域の主婦や仕事帰りの客がメインで、多いときは日に150名程度、少ないときで70名程度だという。
「固定客の方に来て頂けているので、大切にしたいと思っています。食パンの戦国時代と言われていて、新規参入がどんどん増えています。生き残って行くために、日々考えることがいろいろとあります」(守谷氏)
同店で大切にしているのは、明るく元気な接客。お客にはこちらから声かけをするように心がけているそうだ。
一番人気はプレーンタイプの「おいしいうたたね」(864円)。質の良いグラスフェッドバターや生クリームを使用しており、奥行きのある濃厚な味わい、しっとりした口あたりに仕上げた。また、国産さくら蜂蜜で自然な甘味を加えている。
「内緒のホリデー」(1058円)はサンマスカットレーズンを練り込んだレーズンパン。手土産にもおすすめだそうだ。
そのほか、最近思いがけない人気を博しているのが生地にこしあんを巻き込んだ「あんなご褒美」(1058円)。
「女性に非常に好評です。周囲にケーキ屋も多いのに、パン屋で甘いパンを買うお客様が多いことに驚きました。やはりコロナの状況で、あれこれ気にせずにおいしいものを食べたい、という心理が働いているのかなと思います」(守谷氏)
苦心しているのがフードロスの問題
目下、苦心しているのがフードロスの問題だそうだ。保存料を使用していない同店のパンはフレッシュさが命。そのため、つくったその日に売り切るのが鉄則だ。しかし客の入りが天候などによっても大きく変わり、予測が難しい。売り切れなかったパンを地域のレストランで使ってもらうなど、フードロスが出ないような策を検討中とのことだ。
このように、地域に根付き、息の長い運営をしていくことを目標としているのがJBMのベーカリーだ。ブーム後につぶれてしまうような店づくりはしていない。
もっとも、今の高級食パンブームも定着していくと岸本氏は考えている。
「パンは主食なので、ブームで終わらず安定化するのではと考えています。日本ではずいぶん前に、家計の中でのパンの消費が米を抜いていますから。さらに食パンブームによりギフト需要が伸びていることもあり、少なくとも、タピオカのようにしぼんでしまうということはなさそうです」(岸本氏)
全国の各市町村にベーカリーを開業できる余地があると考えているそうで、同社へのプロデュース依頼も2020年は133件、2021年もそれ以上に上る見込みとのこと。これまでに経営がうまくいかず閉店してしまったという例もないそうだ。ただし肝要なのは、店舗として適正な利益を得ながら、雇用にも貢献するなど、地域に必要とされる方法で運営していくことだ。つまり「儲けよう」と考えると難しいという。
奇抜な外見や店舗名だけで売れているわけではない。食や地域へのまっすぐな思いに根ざした店づくりが、“ほどほど”の成功を呼んでいるのだろう。
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