過激派「イスラム国」の迫害行為を直視せよ 米国が空爆で救おうとしている人々とは?

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イラク北西部のシンジャルからドホークに避難してきたヤジーディー(Yazidi)の子供たち。避難していた建物が破壊され、屋外で救援を待っていた。8月25日撮影(写真:ロイター/アフロ)

オバマ大統領が、遅まきながらイラク北部に対する空爆と、避難民への人道支援として食糧・救援物資の投下を命じ、国際社会はようやく「イスラム国」に対する行動に踏み切った。

「イスラム国」とは、最近までISIS(イラクとシリアのイスラム国)と称していたイスラム教スンニ派の過激派武装組織で、ここ数カ月でイラクとシリアの大部分を制圧し、同地に「カリフが統治する国」を樹立したと宣言した。しかし「イスラム国」を脅威と見なす真の理由は、この組織が権力拡大を目指しているからではない。この武装組織の構成員が、組織的かつ冷酷なやり方で、この地域の従来の社会、文化、人口構成を根本的に覆そうとしている点が問題なのだ。

支配地域からスンニ派以外を追い出し

ここ数週間で、「イスラム国」はその支配地域から、イスラム教シーア派とキリスト教徒を、ほぼ完全に追い払った。世界最古のキリスト教徒コミュニティの1つを抱えるモースル市にも、キリスト教徒は残っていない。極めて貴重なアッシリアの遺跡が、偶像崇拝を否定する運動の一環として、公然と破壊された。

同じスンニ派の中にも、イスラム教の極端な解釈に固執しない一派があるが、過激派「イスラム国」は彼らにさえ容赦しない。多くの聖堂が粉々に破壊された。「預言者ヨナの墓」とされる遺跡もだ。

最悪の行為はヤジーディを標的にした迫害だ。ヤジーディは古代から続く宗教グループで、クルド地域で暮らしている。人口は50万に満たず、その3分の2はイラク北部のモースル周辺に居住し、残りはシリア、アルメニア、トルコなどの近隣諸国に散らばる。近年になってドイツや米国に移民した人たちもいる。

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