冷戦終結から32年、EUに再び築かれた「壁」の正体 「ベルリンの壁」の記憶を呼び起こす巨大な壁
昨年9月初旬、ギリシャのレスボス島モリアで超過密状態にあったモリアの難民キャンプで大規模な火災が発生し、何千人もの難民が行き場を失った。モリア・キャンプには約70カ国からの難民が生活し、そのほとんどはアフガニスタンからの難民だった。その後、EUは難民・移民受け入れに関する新たな協定案を発表した。
難民が最初に到着した国に難民認定審査を義務付ける「ダブリン協定」が機能しなくなったEUは、各国間で、より「連帯・団結」した形で難民受け入れの責任を分担する方針転換を行った。大量難民・移民が集中したイタリアやギリシャ、スペインなど受け入れ最前線の国々は、裕福な北欧諸国が受け入れに消極的なだけでなく、受け入れ分担の考えに公然と抵抗する中東欧諸国を非難し、ヨーロッパの分断につながっている。
受け入れるべき人数を大きく下回る中東欧諸国
EUは、加盟国のGDP(国内総生産)や人口、失業率、国土面積によって、受け入れるべき人数を割り出し、加盟国に相応の分担を求めているが、ギリシャのように受け入れるべき人数をはるかに上回る難民・移民を受け入れている国もある一方、中東欧諸国は受け入れ人数が大きく下回っている。
ポーランドは適切な受け入れ能力は約1万4000人とされるが、2020年、コロナ禍で例年より少ないとはいえ、約2800人が難民申請し、その84%が却下された。ハンガリーは受け入れ能力は約3600人とされるが、2020年は115人が難民申請し、73%が却下されている。中東欧諸国は「そもそも鉄条網を敷設することはEUへの入域を阻止することにつながっている」と主張している。
実際、フランスにたどり着いたアフガン難民の多くがフランス北西部の海岸からドーバー海峡をゴムボートで渡り、イギリスへの入国を試みている。10月9日の週末2日間でフランスからイギリスに不法に40隻の小型ボートに乗って海峡を渡った人数は1115人に上ったとイギリス内務省は発表した。イギリスは今年7月末に、沿岸におけるフランスの治安部隊の取り締まり強化に資金を提供するために2021年から2022年にかけて、フランスに対して6270万ユーロを支払うことを約束した。
フランス内務省は今年に入り、英仏海峡を渡ろうとしたイラク人やクルド人、アフガン人は1万8000人に登るとし、イギリス内務省は約1万2400人(昨年は約8000人)がイギリスにたどりついたとしている。イギリスは現在、不法移民に対する法整備強化に動いているが、ブレグジット後のフランスとイギリスの関係は難民・移民問題でこじれている。
難民・移民のヨーロッパの専門家らはコメントとして、イギリスのBBCは「英仏海峡には、世界で最も貧しく混沌とした地域から難民・移民が押し寄せ、命を落とす危険を顧みずにイギリスをめざす人は増える一方だ。責任のなすりつけ合いをしている余裕はない」と指摘している。
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