冷戦終結から32年、EUに再び築かれた「壁」の正体 「ベルリンの壁」の記憶を呼び起こす巨大な壁

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2021年6月18日、ジュネーブから発表された最新の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート」は、「2020年、紛争、迫害、暴力、人権侵害などにより故郷を追われた人の数は、新型コロナウイルスのパンデミックにもかかわらず、8240万人近くにまで増加した。戦後最大規模の7950万人を記録した2019年末時点の統計からも4%増加している」と報告した。

EUは難民受け入れだけでなく、アフガン難民に対して、ウズベキスタンなどアフガン周辺国を支援して難民の保護に取り組む方針だ。

だが、ギリシャのレスボス島モリアの難民キャンプで大火災が起きた後、新たなキャンプ建設に難民たちが激しく抵抗したように、キャンプに長くとどまることを希望する難民は多くはいない。大多数は豊かで安全なヨーロッパに移動し、新たな生活をスタートさせることを希望している。

欧州の求める人材と難民・移民の現状にギャップも

一方、ヨーロッパの受け入れ態勢は2015年に100万人近い難民を受け入れたドイツで明らかになったように十分とは言えない。差別に苦しんでシリアに引き返した難民も少なからずいた。

国益にかなった高度スキル人材を求める欧州と難民・移民の現状にはギャップもある。逃げてきた国が紛争から抜け出し安定すれば帰国させるという見通しが立たない場合も多い。

32年前、ベルリンの壁が崩壊する3か月前、筆者は東ドイツに取材に向かった。西ドイツのハンブルクから東ドイツに入る検問で3時間待たされ、東ドイツに入ったら、半世紀前のヨーロッパにタイムスリップしたような感覚を覚えたことを今でも鮮明に覚えている。

壁が崩壊し、人々が自由に国境を往来できる感動に浸り、EU内での自由な移動が保障された中東欧の人々は、まさか30年後に新たな壁を築かなければならないとは予想していなかっただろう。21世紀に入り、紛争、迫害、暴力、人権侵害などで故郷を追われた人々に立ちはだかる壁は、ポストコロナ時代に新たな深刻な課題を突き付けている。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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