住宅大手が「過去の苦い経験」越え海外進出のワケ 短期施工や品質の高さが追い風になっている

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ところで、これまで紹介した事例は2000年以降の出来事だ。実は歴史をひも解くと、海外進出の事例がないわけではない。例えば、大和ハウス工業は1970年代にアメリカで分譲戸建て住宅約1万戸を供給していた。

ただ、結果的には継続的に収益を上げられる事業展開はできず撤退。夢半ばというかたちとなってしまっている。これは大和ハウス工業だけのことではなく、ほかのハウスメーカーも同様である。

同じく1970年代後半に西ドイツ(当時)で住宅販売に失敗したあるハウスメーカーのトップ(故人)は、回顧録の中で「ドイツでの事業の失敗は高い授業料だった」と語っているという事例もある。

住友林業はかつて韓国に進出したが、現在は撤退。住宅企業の海外進出の難しさを表す事例として紹介するものだ。写真はソウル市近郊に建設した住宅の様子(2007年、筆者撮影)

冒頭で筆者の質問が鼻で笑われたという話を紹介したが、ハウスメーカーにとって海外進出が、そうでもしなければならないほど、触れられたくない苦い経験になっていたのだと考えられる。

では、当時と今とでは何がどう違っているのだろうか。第1はハウスメーカーの本気度、切実さだ。少子高齢化による日本国内の住宅市場が縮小傾向にあるなかで、今後も成長するためには海外での住宅供給へのチャレンジは避けがたいものになったのだ。

住宅不足、省エネなども背景に

そのため現在、各国・地域に関する詳細な市場調査はもちろんのこと、M&A資金の投入や、海外での事業展開に資する人材の確保や育成などに、かつてとは比べものにならないほど力を入れるようになっている。

もう1つ違うのは、海外では住宅不足、さらには施工者不足となっており、短工期で高品質を可能にする住宅供給システムが求められるようになっていることがある。ニュージーランドがその1つだ。

パナソニック ホームズは10月6日、同国で現地企業と共同で1000戸規模の住宅部材を供給すると発表した。その狙いについて現地では移民の増加などによる住宅不足の解消が求められているためだと説明している。

パナソニック ホームズはニュージーランドの足がかりとなる平屋建て住宅の試行棟を今年1月に完成させている。画像はその建設の様子で、日本からオンラインで施工指導を行った(パナソニック ホームズ提供)

供給する部材は、同社が日本で供給する住宅に用いる大型パネル構造用(軽量鉄骨造)のもの。日本の工場で生産したパネルを海上輸送し、今年1月にはオンラインで技術指導をしながら現地で試作棟を完成させている。

パナソニック ホームズは工業化(プレハブ)住宅を供給するハウスメーカー。工業化住宅とは上記のように、工場で生産した部材を現場で組み立てるもので、短工期で品質が高い住宅を供給できるのが特徴だ。

工業化による住宅供給の手法は海外でも行われているが、高いレベルのものではない。この点では優位性が発揮できる状況にあり、このことが各国・地域で認識されるようになったからこそ、ハウスメーカーの海外進出が活発化しているという事情もあるのだ。

住宅不足、施工者不足はニュージーランドだけでなく、前述したオーストラリアやイギリス、オランダなどヨーロッパの一部の国でも同様の状況なのだという。

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