住宅大手が「過去の苦い経験」越え海外進出のワケ 短期施工や品質の高さが追い風になっている

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アメリカの新設住宅着工数はコロナ禍前の数年は年間120万戸ほどがあり、世界最大規模の住宅市場を形成していた。コロナ禍以降はテレワークブームを追い風に2020年度に138万戸となり、そして2021年度には150万戸を上回るとの予測もある。

その中で、とくに強い存在感を示しているのが住友林業である。2003年にシアトルで住宅分譲を開始。現在は西海岸から東海岸まで5社をグループ化し、販売網は合計14州に広がっている。

2020年度にアメリカで同社グループは9045戸を販売。これは全米ビルダーランキングにおける11位相当だ。その結果、同社の海外住宅・不動産事業は2020年12月期に売上高は前期比25.8%増、経常利益は前期比92.1%増となっていた。

なお、同事業が前期の売上高に占める割合は4割ほど。これまでの柱事業だった木材建材事業と住宅・建築事業に肩を並べる柱事業に成長しているわけだ。

日本の技術を現地で生かす

アメリカに次ぐターゲットとなっているのがオーストラリアだ。人口約2600万人と3億人を超えるアメリカとは比べものにならないが、人口は増加傾向にあり、国民の所得も高く、アメリカ同様、政治経済が比較的安定している。

積水ハウスは2008年12月からオーストラリア市場に参入。累計の実績(今年1月末時点)は、宅地開発事業で約2000区画、開発事業で約7000戸に及ぶという。日本国内で販売している木造戸建て住宅「シャーウッド」の部材を用い供給しているのが特徴だ。

アジアは、まだ限定的な進出にとどまっている。例えば中国。政治体制や経済の仕組みが日本とは異なること、とくに昨今の恒大集団の経営危機などに見られる懸念要素が多いためだ。

セキスイハイムのタイ工場の様子。内部は日本と同様の製造ラインが設置されている。モデル棟は現地で開発された仕様で建設されている(2013年、筆者撮影)

東南アジア地域でも一部の富裕層向けなどに限定されており、直近で大幅な事業拡大は見込めない状況だ。その中で、セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)がタイにおいて、現地企業と協力し住宅ユニット工場を構え、住宅供給に取り組んでいる。

そして、新たな進出先として浮上しているのがヨーロッパである。

2019年に現地政府系の住宅供給機関などと組んだ積水ハウスがイギリスに、昨年12月に現地のモジュラー建築(ユニット住宅)会社を子会社化した大和ハウス工業がオランダにそれぞれ進出を果たしている。

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