塩野:2006年に最初に立ち上げた「引越し侍」が安定軌道に乗るまで、どれくらいかかりましたか。
林:3年くらいですね。「なんでそんなに我慢できたのか」と、よく聞かれるんですが、それほど難しいことでもなくて、いずれ黒字になる見通しが立っていたからです。
ユーザーのキーワード検索の結果、表示される広告をリスティング広告というんですが、その費用がすごく高かったんですね。その一方で引越会社さんから入ってくるおカネは少なかったから赤字だったんです。でも引越会社さんが何社以上になれば黒字になるかは簡単に計算できた。地道な営業活動で利用者は増えていっていたので、いつごろ黒字になるかはわかっていました。
塩野:ゲーム会社がそういう営業機能を持つのはちょっと飛躍した感じがありますが、そこは簡単だったんですか。
林:ええとですね、本当は最初、技術者の人材派遣業をやろうと思っていたんですよ。それに人づてで応募してきたのが、今、「引越し侍」の社長をやっている人間です。人材派遣も営業がきちんとできればある程度できる業種なので、僕のなかでは違和感はなかったですね。
塩野:そういうライフスタイルサポート事業って、リクルートなど大手もやっていると思うんですが、後から追いかけられている感じはしないですか。
林:ありますね。 実際、引越しの領域にリクルートさんが入ってこられましたし。われわれの「すぐ婚navi」は、もともとリクルートさんのブライダル事業とは違って、半年以内に挙式したいカップルをターゲットに絞ったものでしたが、リクルートさんも含めて他社さんもそういう領域を意識し始められたので、われわれもさらなる一手を繰り出しています。
エンタメだけだと事業が安定しない
塩野:その一方でIT企業が一見関連のない事業を始めるケースが目立っています。オンラインゲームのGREEがリフォーム事業を始めたり、DeNAがゲノム解析の事業を始めたり。それはどういうふうに見ていらっしゃいますか。
林:そうですねえ。DeNAさんのことはわかりませんが、GREEさんはやっぱりエンタメ一本だと事業環境が安定しないという問題について、社内で本気で議論されるようになったんだなと思いました。ただわれわれの経験からいうと、新規事業は社内的に注目もされないし、最初のうちは売り上げ規模も小さい。そういう中でどうやって事業を育てて行くのか、注目したいですね。
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