口先だけ「人を大事にしない会社」が今後陥る苦難 人的資本経営、ISO30414の大波がやってくる

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そのタイミングで勤務形態に関するアンケートを行ったところ、若手で業績が高い社員ほど勤務形態の変更を希望していることがわかりました。もし、変えなければ優秀な社員から辞めるリスクがある……と判断して、勤務形態を柔軟に変更したそうです。タイムリーに対応することで、社員は自分が大事にされていると感じてくれるのではないでしょうか?

一方、社員の側は、こうした動きをどのように捉えたらいいでしょうか。今、会社が社員の声に耳を傾ける機運は高まっているはずなので、そうした機会を逃さず活用しましょう。

会社に対して改善を求めたい内容があれば、具体的な示唆を伝えましょう。プラスに作用することがいくつもあると思います。例えば、研修に対する意見を求められたら、テーマ別・階層別で行うべき研修をいくつかあげてみる、といったことです。

さらに行わないと困ること、行うことで得られることを示すと、会社側が検討を進める可能性が高まると思います。

働きがいがある会社=働きやすいとは限らない

筆者の知人で商社に勤務しているAさんは、こうしたアンケートでビジネススクールへの派遣の必要性を訴えたところ、翌年から実施され、自分が派遣されることになったとのこと。会社が社員を大事にしている姿勢を示してくれるなら、その流れに便乗してしまえばいいのではないでしょうか。

学び直しの機会など、人財としての姿勢を示す取り組みは今後も増えていくと思いますので、意見を求められたときに答えられる準備をしておきたいものです。

一方、気がかりとしては、正直なところそこまで成長意欲は高くなく、のんびり過ごしたい社員からすれば、“過剰なサービス”が提供されることになるかもしれません。

定期的に職場満足度調査が行われたり、あるいは将来は何をしたいのか?キャリアパスはどのように考えているのか?と頻繁に問われることは「うっとうしい」と思う人も少なくないかもしれません。

社員を大切にする会社は働きがいがあるかもしれませんが、働きやすいとは限らないということです。働く個人としては、会社の姿勢についてしっかり情報収集しつつ、自分にとって合う会社なのか、冷静に判断する材料として活用する機会にするといいように思います。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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