例えば、筆者の知人で中堅製造業に転職したDさん。ところが入社しても、研修は現場で必要な実務関連のみ。社内の移動についても、異動希望をエントリーする仕組みはあっても形骸化していました。さらに人事評価も納得性が低い内容であったため、早々に転職活動を開始。今度こそギャップがないよう、転職後のコメントなどが閲覧できるサイトで次の職場を探しています。
「ギャップなき人財企業」をめざす取り組み
ところが、こうした「ギャップなき人財企業」をめざす取り組みが加速しそうな状況になってきました。ひとつは、人的資本経営。もうひとつは、ISO30414です。
まずは、人的資本経営。これはアメリカの証券取引委員会が財務諸表に記載されていない情報の開示を義務化したことが発端です。この“非”財務情報に人や組織に関するものが含まれるのです。投資の判断材料となりうるレベルで、人材や組織に関する情報を開示するには、本気で社員を人財と考えて、取り組む必要があります。
そして、ISO30414。ISOは国際標準化機構の略称で、商取引を行うためのさまざまなルールを標準化、規格化している機関。マネジメントシステムに関する規格「ISO9001(品質マネジメント)」などで有名です。ISO30414は人と組織に関する指標を開示することを求めた規格。離職率や一人当たり研修費用、ダイバーシティーなどの取り組みが投資判断で必要との観点から開示が義務化されそうなのです。
例えば、離職率に関して、情報開示を拒否したり「30%超でさらに上昇中」と開示するなら投資判断ではマイナスに作用します。そこで開示は“望ましい数値”に改善してから行う、ということを企業は考えることになるはずです。
当面は上場企業が対象になりますが、採用力を強化するために非公開企業でも開示する会社が出てくると思われます。
例えば、筆者が長年つきあいのある中堅システム会社のケースです。研修予算は業界平均以下。ダイバーシティに関する取り組みもほぼ未着手。それでも収益改善が課されているので、人事部は予算を増やすことはできませんでした。
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