口先だけ「人を大事にしない会社」が今後陥る苦難 人的資本経営、ISO30414の大波がやってくる

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ところが社長が、ここにきて「人的資本経営」を標榜すると宣言。状況が変わりました。一人当たりの研修予算を開示するには少なすぎる。今年から大幅に予算を増やすことが了承されたようです。

人的資本経営をめざす動き

人的資本経営の開示について、最近の調査で「今後、積極的に行っていく予定があるか」と聞くと「積極的に行っていく」は10.7%、「おそらく積極的に行っていく」は35.7%で、計46.4%でした。来年あたりから人的資本経営をめざす動きが出てくるように思います。

それでは、ギャップを埋める動きは具体的にはどのように進めていくのがいいでしょうか。会社側としては、社員が何を望んでいるのか?しっかり把握するのがスタート地点だと思います。

コロナによって働き方の価値観が大きく変わろうとしており、これまでの考え方に縛られることなく、本音や潜在的な声をあぶり出せる仕掛けが必要です。

例えば、パルスサーベイと呼ばれる高頻度に仕事に対する質問を行う取り組み。何回も「仕事は楽しいですか?」と聞かれると回答を繕うことが難しく、不満を抱いている社員が誰かみえてきます。そのうえで業績が高く不満を抱いている社員は辞めてもらっては困る。こうした社員が職場に対して期待していながらギャップがあることは改善の優先順位が高い。このように狙いを定めて、社員の声を聞く取り組みを行っていくといいでしょう。

あるシステム開発会社では社員の声を聞いて、勤務形態に柔軟性をもたせるように変更をしていました。もともとは、役員や幹部人材は出社しないと仕事ができないと考えており、コロナが感染拡大しても出社率が高い状況でした。

背景には勤務形態が10時~17時で固定化されていることがありました。コロナでのイレギュラー対応はするものの、勤務形態は一律をよしとしていたので、若手社員は感染の不安を感じながらある程度は出社しなければならない。さらにコロナ収束後は元に戻すに違いない。他社がコロナをきっかけに柔軟な勤務形態を容認する傾向が高まるなか、離職を考える社員も出てきていました。

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