「仮想通貨」で安易に一攫千金を狙う人の落とし穴 理解できないものに「投資」してはいけない

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また、先程は投資対象となる金融商品の一種として、暗号資産を株式や為替と並べたが、やはりここでも「裏付け」という考え方に基づいて暗号資産が投資対象としてはあまりお勧めできないということができる。

株式であれば、発行元の企業の業績や資産などがベースとなり、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの評価指標が存在する。為替も経常収支や金利差などの要因とともに、PPP(購買力平価)のように、合理的な算出に用いる評価指標が存在する。暗号資産はあくまで需給だけで価格が動き、それが合理的であるかどうかを評価する指標もない。

それでも、暗号資産は法定通貨のポジションを脅かす存在だと主張する向きもあるが、その為には規模が小さすぎるということもいえよう。ビットコインの時価総額は100兆円にも満たず、主要先進国の法定通貨の供給量と比較するまでもなく、日本単体の通貨供給量に対しても、そのわずか10%程度でしかないのだ。

投資の基本から学び直すべし

筆者は暗号資産の専門家ではないので、細かいところまで把握しているわけではないが、これまで書いてきたことはあくまで常識で考えればわかる範囲の内容でしかない。

しかし、暗号資産に熱狂する投資未経験者の方たちにこのような話をしても、あまり理解はしてもらえない。それよりも、暗号資産の急激な値上がりや、本当かどうかもわからないがネット上での成功体験記を真に受けて、自分も一攫千金を狙おうとしているようだ。

投資の世界には昔から「理解できないものに投資をするな」という内容の格言がある。

これは暗号資産に限った話ではなく、株式投資でも同じである。「あの会社の株価が急騰している」というような話を耳にしたとしても、その会社がどのような商品、サービスを提供して儲けているかなども知らないまま、投資をするというのは少なくとも筆者はお勧めできない。まして、老後資産など将来のために資産形成をするというのならもってのほかだ。

1年もしないうちに投資(個人的には投機だと思うが)で大金を儲けたというような話を耳にすれば、自分も一攫千金を狙ってやろうという気持ちになるのは理解できるが、それでは丁半博打のようなギャンブルと何も変わらない。自分が一生懸命働いて貯めたお金を投じるのだから、せめて最低限の知識は身につけたうえで、冷静な判断をしてほしいと思う。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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