「元本保証」と「毎月8~10%の配当」を約束――。今月に入りあるニュースを目にして驚いた。
金融商品取引業の登録をせずに株式投資名目の出資を募ったとして、8月、金融商品取引法違反容疑と詐欺容疑で投資運用会社「リプラス」の社長らが逮捕された。
報道によると、セミナーなどを通じて勧誘し、関東を中心に約1500人から総額約80億円を集めていたという。単純計算で1人あたり500万円以上を出資したことになる。これだけを見れば「よくある金融詐欺じゃないか」と思う読者もいると思うが、私が驚いたのはそのセールストークの内容だ。
セールストークのなかで「元本保証」と「毎月の8~10%配当」を約束していたという。そんなおいしい話がこの世にありうる訳がない。それにもかかわらず、ありえないはずのセールストークでも約80億円も集められてしまうというから恐ろしい。これはひとえに出資者の金融リテラシーの欠如からくる現象であろう。
金融リテラシーとはいったい何か?
「金融リテラシー」とは、投資知識だけでなく、家計管理や生活設計など身の回りのお金に関する知識や情報を正しく理解し、主体的に判断することができる能力のこと。日本では欧米諸国に比べて遅れていたが、2022年より家庭科で「金融教育」の授業が行われることになっている。
なお、本連載(『「お金で損しない」森永康平のマネーリテラシー講座』)では金融リテラシーを身につけないまま社会人になってしまった人へ向けて、お金で損しない人の正しい知識をお届けする。第1回目の今回は金融詐欺から身を守る思考法を紹介する。
ニュースではよく目にするが、実際に金融詐欺をもちかけられたことがないという読者も多いと思うので、最近筆者のところに相談が来た2つのケースを紹介しよう。
1つ目はまさに冒頭のニュースと同じケースである。前出のケースでは「元本保証」と「毎月8~10%配当」を約束して株式投資を名目に出資を募ったということだが、「絶対に儲かる未公開株への投資」や、「元本保証を約束した不動産投資」などセールストークの内容は多様である。
投資対象は違えど、非常に高い利回りを約束し、「元本保証」や「絶対に儲かる」という常套句がついてくることは共通して見られる傾向だ。
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