歌舞伎由来の「幕の内弁当」中身が一口サイズの訳 「花道」「だんまり」「黒衣」も歌舞伎生まれ

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ほかに、お茶漬けのりが歌舞伎カラーといえばイメージがわくだろう。三色の幕、定式幕(じょうしきまく)が由来だが、実際のパッケージは違う。「四色」使われている。それも実際の幕にはない赤と黄色。モデルの色の黒と緑が入っていて、使われていないのはお茶漬けなのに「茶色」、それは地味。色で印象的な黄色と赤、どちらも目に飛び込んでくるインパクト。発売から70年変わっていないとか。

三色は「黒」「柿」「萌黄(もえぎ)」と歌舞伎では言う。柿は実の色ではなく柿渋色とか。萌黄も緑というよりふさわしい和名である。ちなみにこの色は江戸の芝居小屋、江戸三座に限る。森田座と市村座の幕の色。中村座は「黒」「柿」までは一緒だが「白」の三色。「平成中村座」で使用される。上方の芝居小屋は三色ではなく自由にさまざまだったとか。

幕は「幕を引く」「幕を下ろす」など、芝居から生まれた日常語。「幕開け」も多用されるが、歌舞伎では「幕開き」である。「あけ」と誤用が増えたのは「夜明け」感覚から転用されたからだ。

花道は祝儀を渡す場所の幅が広がっていった

「人生の花道」「引退の花道を飾る」などの花道。歌舞伎研究の服部幸雄からは、ひいき客が「花=祝儀」を渡す場所がいつしか幅が広がって舞台として演技にも使われるようになったからと教わった。大衆演劇のお札の首飾りや昭和の歌謡ショーの花束贈呈を連想してほしい。

最初からあの一本道があったわけではなく、升席にするため縦横に客席には長い板(歩み板)が配置されていて、そのうちの一本の幅が広くなり花道へと進化していったという。もう一本の上手側の仮花道とともに両花道といって、同時に使う演出もある。「御所五郎蔵」「吉野川」「かさね」など、観客は首を左右に振りながら、ぜいたく体験をすることになる。

カノジョにご馳走するときやプレゼントで「見栄(みえ)を張る」という表現は、芝居由来ではない。「見得(みえ)を切る」が正しい。「大見得を切る」なども使う。ここぞという勝負時、ビジネス会議のプレゼンテーションの結論を大きな声でゆっくりと締めくくる。ぎょろりと目玉をむいたり、書類を手に掲げてストップモーション。歌舞伎から「見得」ポーズを学んでほしい。役に立ちますよ。夫婦喧嘩では多用しないように。

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