あなたは「芝浜だけに」の意味がわかりますか 吉田茂、渋沢栄一が愛した教養としての落語

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新駅「高輪ゲートウェイ」の名称決定の際に、SNS上で話題に上った落語の演目「芝浜」とは? 落語に影響を受けたといわれる吉田茂元首相の演説とともにご紹介します(写真:2019年11月、大澤誠撮影)

2020年の3月14日に開業する予定のJR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」。この駅の名前が決定したときSNS上である投稿が目立ちました。「夢になっちゃったね。芝浜だけに」。このとき、私は落語が教養のある人たちに共通言語として使われていたのを目の当たりにしました。

先日上梓した『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』でも触れていますが、落語は単なる娯楽にとどまらない、日本の伝統芸能の1つであり、日本人の価値観を教えてくれます。また、落語は吉田茂元首相や2021年の大河ドラマの主人公である渋沢栄一氏など、数々の政治家や経営者に影響を与えたといわれています。ここでは、落語に影響を受けた吉田茂元首相の演説と、「芝浜だけに」の意味に迫ります。

落語に影響を受けた“和製チャーチル”吉田茂

吉田茂元首相が、選挙活動中にコートを着たままぶっきらぼうに演説をしている際に、「外套(がいとう)をとれ!」と聴衆から野次を飛ばされたとき、こう言い返しました。

「外套を着てやるから、街頭演説です」

1916年に寺内正毅内閣が発足し、旧知の間柄であった寺内首相に「総理大臣の秘書官をやらんか」と水を向けられたときには、

「総理大臣なら務まるかもしれませんが、秘書官はとても務まりそうもありません」

晩年に訪問客から「お顔の色が大変いいようですが、何を召し上がっていらっしゃるのですか?」と問われたときはこうです。

「人を食ってます」

吉田元首相は、人の心をつかむ才能にあふれた人でした。彼の言葉は、表面的にはシニカル(冷笑的)でありつつも、温かな人情味を秘めていて、周りの人間を魅了し続けたそうです。

その才能は外交の局面でも遺憾なく発揮されます。

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