あなたは「芝浜だけに」の意味がわかりますか 吉田茂、渋沢栄一が愛した教養としての落語

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

執務中、ほとんど席に着かず、室内を歩き回るのが常だったGHQのマッカーサー元帥に対し、吉田元首相は愛嬌を込めてこう声をかけます。

「まるで檻の中のライオンだな」

マッカーサーはニヤリとしたあと、吉田首相にフィリピン製の葉巻をすすめます。しかし彼は、「私はキューバ製しか吸わない」と、ストレートに断りました。

一見不遜な吉田元首相ですが、マッカーサーは非常に気に入り、彼との面会には必ず応じるようになったのだそうです。

吉田茂が愛していたのが落語

その後、吉田首相が「餓死者が出るから食糧輸入をしてほしい」とマッカーサー元帥に交渉したとき。「日本の数字はずさんだ」と責められた際に返した言葉はこうでした。

「戦前に日本の統計がもし完備していたなら、あんな無謀な戦争はやらなかったろうし、もし完備していたら、勝っていたかもしれない」

吉田元首相といえば、敗戦後の日本の政治や経済を復興させた“立役者”。連合国軍総司令部のマッカーサー元帥の指示を受けながら、敗戦した日本を復興させた総理大臣です。アメリカの要望を聞き入れながら、日本側のメリットも守る。さまざまな交渉術を駆使し、難しい大役を果たしてくれた偉人です。その政治力と葉巻をこよなく愛したことから「和製チャーチル」と呼ばれました。

「吉田首相がサンフランシスコ平和条約の締結に注力したおかげで、GHQによる日本の支配が早めに終わった」そう評価する声まであります。

そんな彼が愛してやまなかったのが“落語”です。

彼の落語マニアっぷりは有名で、古今亭志ん生師匠(五代目)や桂文楽師匠(八代目)などを料亭にまで呼び、落語をきいていたほどです。

落語が彼の人間力、政治力に多大な影響を与えていたことは疑いようがありません。

吉田元首相以外に、「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一氏をはじめとする経営者など、エリートと呼ばれる人たちの中には落語を日常的にきいている人は数多く存在しています。

落語は、共通言語として使われることがあります。実際にこの落語が共通言語として使われた瞬間を目の当たりにしたことがありました。それは、2020年に開業する東京の山手線の新駅が「高輪ゲートウェイ駅」に決まったときのことです。この山手線の新駅の名前を公募で決めることが2018年の6月に発表されました。

次ページ「芝浜だけに」の意味がわかりますか?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事