あなたは「芝浜だけに」の意味がわかりますか 吉田茂、渋沢栄一が愛した教養としての落語
そこでネット上ではさまざまな予想がなされましたが、開業予定地が芝浦であったこともあり、日本の伝統芸能である落語の代表演目である「芝浜」がいいのではないか、と予想する人が多数いました。ウェブ上での投票数でも「芝浜駅」は3位でした。
しかし皆さんもご存じのとおり、結果は「高輪ゲートウェイ駅」。そこでツイッターをはじめネット上ではこんな投稿が目立ちました。
「夢になっちゃったね。芝浜だけに」
「芝浜」は、大金を拾った亭主に対して、女房は「夢でも見たんじゃないの?」と一芝居打ち、亭主を改心させ、酒浸りの生活から更生させるという古典落語の1つです。
「よそう。また夢になるといけねえ」
この噺の名文句といえば、オチのフレーズでしょう。
大金を拾った3年後、商売で成功をおさめ、お金を受け取った記念として「久しぶりに酒を飲もう」と誘う女房に亭主はこう返します。
「よそう。また夢になるといけねえ」
「芝浜」という落語は「夢オチ」をうまく使いこなした噺なのです。私も新駅が決まる前に以下のような投稿をしたところ普段より多くの反応があり、古典落語「芝浜」の認知度の高さには驚きました。
「夢になっちゃったね。芝浜だけに」と投稿した人たちは落語に関心を持ち「芝浜」の内容を理解した人たちで、落語が教養のある人たちによる共通言語として使われていたのです。
落語は今でこそ伝統芸能の1つでありますが、もともと江戸時代に庶民に愛された「娯楽」でした。2020年は日本でオリンピック・パラリンピックが開かれます。多くの人が興味をもつ日本の伝統文化・芸能をこの機会に学び直してみてはいかがでしょうか。
最後に、古典落語で最も有名な人情噺といっても過言ではない「芝浜」のあらすじを紹介します。
■「芝浜」のあらすじ
腕はいいのに大酒飲みの魚屋の亭主・勝五郎、通称魚勝という男がいました。いつも酒浸りで、商いに出かけようとしません。しっかり者の女房が「今晩飲ませてくれたら明日から仕事する」という言質を取り、またまた浴びるほど飲んだくれて寝てしまいます。
あくる朝、女房に「お前さん、商いに行ってくれよ」と叩き起こされ、ようやく河岸に出かけてゆきます。ところが芝・増上寺の鐘の音を聞き、女房が一つ時を間違えて起こしたことに気づきます。
魚勝は怒りを抑えて、河岸が開くまで顔を洗ってたばこを吸って過ごすことにします。すると、波打ち際に流れ着く革財布を発見。開けてみると、なんと42両もありました。魚勝は喜び勇んで帰宅し、女房に報告すると、また酔いつぶれて寝てしまいます。
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