ただし、ここで前期比の変化率に振り回されるようではイケナイ。仮に日本経済がゼロ%成長で、GDPが実額ベースで100億円だと仮定しよう。この場合、変化率は以下のように推移する。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
GDP実額 100億円 100億円 100億円 100億円
変化率 0% 0% 0% 0%
次に第3四半期から消費増税が行われて、需要が20億円分、前期にずれ込んだと仮定しよう。第3四半期はGDPが80億円に減るが、第4四半期には元通り100億円に戻ると考える。この場合、実額ベースのGDPは下記のようになる。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
GDP実額 100億円 120億円 80億円 100億円
変化率 0% +20% -33.3% +25%
需要の先食いをした場合の「マジック」に注意
この場合、第3四半期のマイナス33.3%を見てつい慌ててしまうのだが、それは第2四半期という「山」から「谷」を見るために起きる錯覚である。第4四半期はまたプラスで元に戻る。つまり需要の先食いをやってしまうと、変化率はプラスよりもマイナスが派手に見えてしまうのだ。
GDPは普通、前期比で表す。だからこそ、上記のような「ドッキリ効果」が起きてしまう。前年比で表していれば(例えば中国のGDPは前年比で公表される)、「ゼロ%、+20%、マイナス20%、ゼロ%」という表示になり、あまりドラマチックではなくなる。だから4~6月期速報値のマイナス6.8%にあんまり驚いてはいかんのだ。こんなのは初歩だよ、ワトソン君。
しかし日本政府は、もう少し腹黒く計算していることだろう。彼らにとって、真に重要なのは足元の7~9月期なのだ。4~6月期はいくら悪くても、「これは想定の範囲内」と言い張ることができる。彼らにとって重要なのは、次の7~9月期がちゃんとプラスに戻るかどうかである。7-~9月期が見栄えのする数字になるためには、4~6月期はむしろ悪い方が都合がよい。それだけ「深い谷から山を見る」ことができるからである。
7~9月期のデータがなぜ重要なのかは、わざわざ説明するまでもないだろう。年末になると、来年10月からの消費税再増税(8%→10%)の決断が待っている。7~9月期のGDPは、一次速報が11月17日、二次速報が12月8日に発表される。12月15日に発表予定の日銀短観と併せて、増税を判断する最重要材料となるのである。
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