狙ってそうなったわけではない。やってみたら、いつの間にかそうなっていたのだ。
で、そうなってみれば料理はめちゃくちゃ簡単だし美味しいし、まったく奇跡のように言うことなし。いやー人生って、健康って、幸せって、こんなにカンタンなことだったのか! と、今日も嬉しい驚きにグフフとほくそえまずにはいられないんである。
そう思い返せば、すべての始まりは、ただ「冷蔵庫をやめたこと」であった。
いやもちろん、「ただ」やめたなんていう簡単なもんじゃなかったっすよ! 原発事故を機にいろいろあってまさかのそんなことになっちゃったわけなんだが、いわば決死の覚悟と言いますか、そんなことして本当に生きていけるのかとドキドキしながら電源をエイと抜いてみたわけです。
で、どーするんだどーするんだどうやって毎日食べていけばいいんだ食材はどうやって保存すればいいんだとアタフタしていた私の眼の前に救世主のごとく現れたのが、「菌」でありました。
「ぬか床」は冷蔵庫のない時代の必需品
その存在に気づいたのは、ワラをも掴む思いで、冷蔵庫のない時代の食生活を調査研究して目ざとく発見したのである……っていうか、テレビの時代劇の貧乏長屋の食事シーンをじっと見ていてナルホドそうかと膝を打ったのだ。彼らのおかずは日々、汁と漬物。確かにこれなら冷蔵庫なんぞなくとも毎日ちゃっちゃと作れるし、ぬか床があれば食材の保存にもなる。
で、早速やってみた。そうしたら、いやーこれはめちゃくちゃよくできてる! と瞠目するばかりであった。
ぬか床があれば、余った食材をうまいこと回していけることに加え、非常に効率的なのだ。だって、使い切れなかった野菜の切れっ端はとりあえずぬか床にGO! すると翌日には立派な「ぬか漬け」というおかずに変身しているんである。取り出してカットするだけで一品完成! 冷蔵庫などという大層な装置の出る幕など一切なし! カンタン便利とはまったくこのことだ。
実を言えば、私はそれまでずっと、ぬか漬けとは、いわゆる「ていねいな暮らし」をする人の中でも、それを極めた、雑誌とかに登場するようなスーパーな人だけがやる崇高な台所仕事のように思っていた。
でも全然そういうことではなかったんである。それは冷蔵庫のない時代の、生きていくうえでなくてはならない、そして非常にうまくできた極めて実用的な食材の保存方法だったのだ。
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