「スッキリ」を完璧に叶えてしまう「ある方法」とは 「発酵」は買わなきゃもれなくついてくるもの

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え、そんなことないって? スーパーに行けば山ほど売ってるよって? 確かに売ってますな。でも、試しに漬物が入ったビニール袋の裏の成分表示を見てほしい。そのほとんどに、驚くほど多くの添加物が入っていることに気づくであろう。一体何で? 漬物って保存食なのでは? つまりは塩さえあれば何も添加せずとも発酵の力で立派に完成するはずなのでは……? ナゾである。

つまりは、そのような商品は正確に言えば、本当の意味での漬物ではないのだ。さまざまな添加物によって、漬物風の味付けやら保存の処理やらがなされた何かなのだ。つまり、しっかりと発酵してないんである。

いや、わかりますよ。誰が悪いわけでもない。発酵は何しろ製造責任者が菌だから、人の思う通りに働いてくれるってわけにはいかない。短時間に安く大量生産なんてそうそうできないんである。

しかも今やスーパーだろうが家庭だろうが絶対に冷蔵庫ってものがあるわけで、別に漬物じゃなくても「漬物風」の何かでも、そこそこ日持ちするのだ。ならば本物の漬物なんて、別になくてもいいんじゃね?

……というのが現代社会なのであります。

「発酵の知恵」を捨てて、「発酵食品」を買う?

つまりは我らは便利社会を享受することによって、発酵という歴史的な知恵と、健康的な食事を、ほんの半世紀ほどで、身近な暮らしの中からあっさりと捨て去ってしまったのだ。

ってことで、発酵ってものが今や「商売」になっておるわけです。発酵は特別なもの、お金を出して買わなきゃ手に入らないものになってしまったというわけ。

いやーすごいね。これを一言で言えばマッチポンプってことになるのではないでしょうか。壮大すぎて誰もそのことに気づいてないけど、私はちゃんと気づいたよ! 

何しろ「買わない生活」により、一人勝手に歴史を遡って暮らすことになってしまい、でもやってみたら、そこにそもそもすべてあったじゃん! ってことを身を持って知ってしまったわけですから、どうやったって気づかざるをえなかったんである。

もちろん、繰り返しますが、発酵食品が注目されているのはとても良いことだし、是非とも暮らしに発酵食を取り入れて、その素晴らしさを実感していただければと思う。先人の素晴らしい知恵と工夫を体感する大きなきっかけになるはずだ。

でももしできるなら、買ってくるだけじゃなくて、ちっちゃなぬか床のタッパーひとつでも家に備えてみてはどうだろうか。

さすれば、社会の進歩とは何か、便利とは、お金とは、健康とは何かということについて、つまりはこのどうにもがんじがらめになって閉塞感しかないような世の中が一体どうして出来上がってしまったのか、そしてどうやったらそこから抜け出せるのかということについて、案外突破口は身近なところになるのだということを知る、とてもよいきっかけになるのではないかと私は思うわけであります。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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