時代映すヒットCMから読み解く「家族像」の大変化 かつては「亭主元気で留守がいい」、今は?

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「白戸家」は、もしかしたら日本で最も有名な家族の一つかもしれない。ソフトバンクのCMにこの一家が登場したのは2007年。実に14年にわたって続く長期シリーズである。

なんといってもお父さんが白い「犬」であることが類のないユニークネスだろう。なぜお父さんが犬なのかについては、威張っているのに家族の順位が低いからなど、理屈はいろいろ考えられるが、理由づけにはあまり意味がなさそうだ。「お父さんは犬である」というシュールな設定こそが、この家族を特別なものにしている。

お母さん役の樋口可南子、娘役の上戸彩もいいが、長男はオバマ元米大統領に似たダンテ・カーヴァー。もはや誰も「なぜ息子が黒人なのか?」と突っ込んだりしない。「ヘンな家族」という不条理を織り込んで見ているのであり、「何でもあり」という強みを獲得している。それをいいことに時々の旬の話題を取り入れ、情報をアップデートし続けるので、シリーズの鮮度が保たれるというわけだ。

「何でもあり」なので、お父さんが声変わりして北大路欣也からガッツ石松になってもいいし、染谷将太と広瀬すずが父母の青春時代を演じたっていい。祖父母や子どもたちの結婚相手も登場して家族は拡大し、いつの間にか出演しなくなった親戚がいても、それをとやかく言うのは野暮だろう。そもそもが融通無碍なのだ。

おびただしい家族の物語を通し、スポンサーの新サービスやキャンペーンをタイムリーに取り入れるのはさすがである。家族の面白いエピソードが楽しめるので、嫌みにならず飽きることもない。「ちょっと変わった家族」は、あらゆる日常のエピソードを盛り込むことが可能な、最強のフォーマットなのだ。

競合のauは異なるアプローチで展開

これに対し競合のauは、異なるアプローチで人気シリーズを展開している。桃太郎(松田翔太)、浦島太郎(桐谷健太)、金太郎(濱田岳)の「三太郎」が幼なじみという設定である。友情を軸に若年層に照準を絞っているが、実はここにも家族が描かれている。シリーズが進むにつれそれぞれがパートナーを持ち、並行して家族の物語が繰り広げられる。

桃太郎はかぐや姫(有村架純)と家庭を築く。金太郎も織姫(川栄李奈)と別居結婚中。浦島太郎にも意中の乙姫(菜々緒)がいて、気のおけない仲間同士が成長し結婚しても、友情は続いていく。血縁による縦の関係ではなく、友だちという横の関係の先にある家族の描き方は、ターゲット層の若者の気分にフィットしている。

昔話の主人公がキーパーソンとなるので、誰がキャスティングされどんなカップルの組み合わせになるかなど、サプライズの要素がある。加えて家族と友情という縦横の広がりがあり、見続けても飽きない優れた枠組みなのだ。

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