ゴルフ界「練習生のツアー大会」新設する深い事情 意外と知らないトップ以外のゴルファーの実情

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トーナメントを運営するのは、JCGマネージメント(JCG社)が行う。丘智将(おか・ともまさ)代表は「初年度は、関西、関東の2ブロックでの開催でプレオープンとします。今後は九州、中部、東北の計5ブロックでの開催を目指したい」と話し、10月から関西ブロックですべて平日の男女各9試合、11月から関東ブロック男女各9試合が行われる。計36試合になる。

年間成績優秀者にはJLPGAのステップ・アップ・ツアー ECCレディースゴルフトーナメント、レギュラーツアーのアース・モンダミンカップのマンデー出場枠など、上位ツアーへの道も用意している。

エントリーの手順の詳細は省くが、JCG社サイトで登録、申し込みをしてJCG社の会員となり、人数によってJCG社で日時や会場を割り振るという。

エントリーフィーの決済などには振込手数料がかからないネット銀行を使用し、参加するコースも居住地の近隣に振り分けて交通費負担を減らすなど「極力、出場者の出費を抑える」(丘氏)ことに主眼を置く。

平たく言えば「試合もお金もない」選手たちに、なるべくお金がかからない方法で試合という「場数」を踏んでもらおうということだ。女子プロの藤井かすみがアンバサダーを務め、コースセッティングなどを行うので、より本格的な「試合」を経験できることになる。

丘氏の子どももジュニアゴルファーとして活躍している。「これまでたくさんのジュニアゴルファーを見てきましたが、ゴルフがうまくなるにはやはり時間とお金がかかります。大学でゴルフをやめる子もいました。金銭面と試合がないことでゴルフをあきらめる人を目の当たりにしてきて、なんとかできないかというのが(この事業の)始まりです」と言う。

ゴルフ場とスポンサー探しが課題

こうした「機会に恵まれない層」は全国に「2000~3000人はいる」とみている。「できれば全員が1、2試合出場できる場を設けたい」という。3000人が2試合に出るとすれば、1試合60人なので、単純計算で年間最大100試合なければならない。また、参加資格には賞金が出ないがジュニアゴルファーやアマチュア(ハンディ13以下)も含まれており、さらなる試合数の確保には会場となるゴルフ場、スポンサー探しなどが課題になる。

現在はアース製薬、綜合警備保障ほか14企業・団体が協賛しているが「持続可能にしていきたい」と、今後は各地域の企業やメディアと連携して、地域振興の形での大会なども模索していく。ただ、地方ではすでに、各県ゴルフ連盟や企業、自治体などによって、レギュラーツアーでも下部ツアーでもない大会も多数開催されており、そのすみ分けや連携もJCGのツアーが地方に定着していくカギになるだろう。

何より選手の知名度はほとんどないと言っていいだけに、JCGの意義や理念によって認知されなければ、スポンサーもつきにくい。そのため、「皆さんに(活動を)知ってもらえるよう、試合の様子などをSNSなどで発信をしていきたい」(丘氏)と、「ゴルフ女子」のインフルエンサーらに協力を依頼している。ゴルフ界だけではなく、一般にもJCGの役割を広めたいところだ。

プロゴルフ界の中で、存在がわかっていながら対策が取られていなかった層へのアプローチ。100万円という賞金総額設定なので、スポンサーになるには手を挙げやすい金額だろうか。ひょっとしたら、その中に将来のメジャーチャンピオンが潜んでいるかもしれない。そんな作り手としての楽しみもある。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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