コロナ「自宅療養が基本」政策のわかりにくい意図 病院と開業医の役割分担必要だが混乱だけが残る
松山キャスター:政府の「自宅療養が基本」という方針についてはかなり戸惑いも出ているようだが、橋下さんは先週「自宅療養が基本」は必要(な考え方)だと訴えていた。今回何が問題になっていると思うか。
レギュラーコメンテーター・橋下徹氏(元大阪市長・弁護士):僕は菅首相の今回の方針は大英断だと思っている。福島の処理水を海洋放出することを決めたことにも並ぶくらいだ。とにかく反対の声が湧き上がるようなことをあえて方針決めたことは大英断だ。
だが、菅首相の問題点は、決め方が悪い。もったいない。菅首相は、皆が賛成するような課題、例えば、携帯電話料金の値下げや、ワクチン1日100万回接種などについては、ゴールを決めて官僚の尻をたたいて実現していく。これは得意だが、賛否両論激しい問題に関しては、きちんとプロセスを踏まない。
だから、今回の方針についても、賛成、反対、大野知事のような反対の考え方もあるし、僕のような賛成の考え方もある。オープンの場で大激論させたうえで、最後に菅首相が決めるというプロセスがないから、みんなから批判を受ける。
病院と自治体と開業医の役割分担を明確化
今回、菅首相が言いたかったのは、何も患者を見捨てるのではなくて、病院と、自治体と開業医の役割分担を明確化する、ということだ。吉村大阪府知事をはじめ、関西の知事が「ホテル療養を原則とする」と言っているが、ホテル療養を原則とする限り、全部自治体が管理していかなければいけない。
東京都医師会の尾崎治夫会長が先日、新聞のインタビューに答えていたが、自治体・保健所で対応するのはもう限界になると。埼玉県も大阪もまだ大丈夫なのかもわからないが、限界になったときに、医師が判断をして開業医がしっかり責任を持たなければいけないというのは、ものすごく賢明な見識だ。病院、自治体が対応する患者と、開業医が対応する患者を分けるのが、今回の方針の一番の肝だと思う。そこがうまく伝わっていない。
松山キャスター:病院と開業医の役割分担がうまくできていないということだが、大野知事はどう考えるか。
大野知事:将来的にはそうだ。ワクチン接種が進むと、例えば、アメリカで1億6,100万人がワクチン接種を完了し、亡くなる人は0.007%だ。これは犬にかまれる程度の死亡率だ。その程度になったときには重症患者を病院で診て、それ以外は開業医が診ることが可能になる。ただ、その準備ができないままに決断してしまうと、今回のように大きな混乱だけが残ってしまって皆が対応できない。