コロナワクチンの接種が急ピッチで進む日本。今後、若い世代を含めてさらなる接種が本格化する。こうした中、問題の1つとして挙がっているのが副反応である腫れや発熱だ。
市販薬のアセトアミノフェンの品薄もあり、厚生労働省はワクチンを受けた後の発熱や痛みに対して、アセトアミノフェン以外にもイブプロフェンやロキソプロフェンなどの市販薬も選択肢であるとのQ&Aを出すなど、対応している。
アセトアミノフェンの予防的な処方の問題点
先日、あるニュースが薬剤師界隈で話題となった。島根大学が職域接種の会場で、解熱鎮痛薬を「配布」したとのニュースで、“解熱鎮痛薬を配布する配慮も”と報じられた。
これに対し、薬剤師を名乗るアカウントなどからはSNS上などで、「アセトアミノフェンがポケットティッシュのように配られているの、カオス」「配布ではなく処方の間違いですね。自由診療でもカルテ記載していなかったら法律違反です」などの反応が相次いだ。
まとめると、リスクとベネフィットの双方を併せ持つ医薬品に対して「配布」という言葉が用いられたことの違和感と、国の財政が逼迫する中で推進が必須となっているセルフメディケーションへの国民的な意識の低さに対する憂いである。
コロナワクチン接種、しかも職域接種というこれまでにない事例であることから、「どういう解釈運用なのか?」という疑問も根底にはある。筆者は島根大学にどのような解釈で運用しているのか、また前述のような意見に対する見解などについて書面回答を求めたが、残念ながら「回答を控える」とのこと。
一方で、職域接種を実施した企業関係者によると、職域接種には一般的に2パターンあるという。企業内診療所と、巡回診療という申請の仕方の2つだ。「複数の医療機関の医師に依頼をする場合は、企業内診療所という申請でないとダメで、特定の医療機関の医師に依頼する場合は、巡回診療という形で対応できるようだ」とのこと。
つまり、いずれの形であっても診療として解熱鎮痛剤が処方されたことになるが、ここにも、問題点が1つ指摘される。
もちろん、医師の判断で解熱鎮痛薬を処方することはできるが、本来あるべき保険診療の姿としては、副作用や発熱が起こるかもしれないという予防的な処方は望ましくないということだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら