“解熱鎮痛薬を配布”のニュースは海外の薬剤師からも衝撃的に映っている。現在アメリカの病院で勤務する薬剤師のハワードめぐみ氏(昭和薬科大学卒、2009年に薬剤師免許取得)は、「日本特有の事例だと感じた」とし、次のように話す。
「アメリカのワクチン接種会場で薬を無料で配布しているというのは、少なくとも私は聞いたことがないです。今はドラッグストアがメインの接種会場となっていますので、必要であればそこの棚にあるから買っていってください、という感じです。そもそもアセトアミノフェンは大体の家庭に常備されていますし、どの市販薬を飲んでいい/避けるべき、というのは日頃から自身で把握している方が多いように感じます。もちろんその過程で薬剤師も貢献しています。
財源に限度があるという意識は日本のほうが希薄だと感じます。人件費の高い医師をワクチン投与の人材としている時点で明確ですね。どなたかが医師のワクチン投与について『F1ドライバーに車庫入れをやらせているようなもの』とツイートされていましたが、そのとおりだと思います。アセトアミノフェンを配布するとなると、その使用可否も問診時に確認しなくてはいけないのでしょうし、さらに時間がかかりそうですね」(ハワード氏)
費用対効果は適正なのか
さらに、配布するとしてもそのアウトカム、費用対効果をはかる研究の検討はないのかと指摘する。
「アメリカは市販薬を安価にし、薬剤師をプライマリケアとして設置することで受診頻度を下げて財源をセーブしていますが、薬剤師の参加によるコスト削減や患者の予後に関する研究の改善といった研究結果もたくさん出ています。
たとえば無料でアセトアミノフェンを配布したグループとしなかったグループで、アセトアミノフェンの費用、その後の受診回数、医師/薬剤師の人件費、仕事を休まなければいけなかった日数など、トータルでかかった費用などを比べる研究が日本でもあったら面白いとは思います。
そういった薬剤経済学研究の結果に基づいて、無料で配布したほうが全体コストが削減されるというのであればわかりますが、ただただ安い薬だし、よかれと思って、というのは違和感がありますね」(同)
ドイツの薬局「セントラル薬局」を経営するアッセンハイマー慶子氏は、このニュースに関して、「医薬品を渡す際には有効性・安全性の説明が必要で、それは薬剤師に任せたほうが合理的だ」と指摘する。
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