ワクチン接種会場で「解熱鎮痛薬の配布」は美談か 日本人の低いヘルスリテラシーという根本問題

✎ 1〜 ✎ 148 ✎ 149 ✎ 150 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

根源的な問題は、解熱鎮痛薬の「配布」を「配慮」とする報道に対して、何の違和感も覚えない日本人のヘルスリテラシーの低さではないだろうか。ある研究で、日本のヘルスリテラシーは最下位であることがわかっている。

聖路加国際大学大学院看護学研究科教授の中山和弘氏が行った研究によると、オランダなどEU8カ国、台湾などアジア6カ国に日本を加えた15カ国を対象としたヘルスリテラシーの平均点はオランダが37.1でトップだったのに対し、日本は25.3で最下位だった。

この調査のヘルスリテラシーとは健康情報の「入手」「理解」「評価」「意思決定」の4項目で、中山氏によると、「選択肢を知り、各々の長所と短所を理解し、自分の価値観に基づいて意思決定することによって健康につなげる」、この一連をヘルスリテラシーとしている。

日本人は「入手」「理解」までは劣らないが、「評価」「意思決定」の部分で各国に格差がついてしまう状況だという。

「セルフメディケーション」の意味

これは、たびたび「恵まれている皆保険制度」の弊害として語られてきた。医療リソースが豊富なときは、専門家にかかりっきりでよかったのかもしれないが、これから少子高齢化、特に労働人口減少が急速に進む日本においては、「最善」ではなく「最適」な医療のあり方が問われている。そのときには、上手な医療のかかり方を学び、判断できるヘルスリテラシーの向上施策は並行して行うことが必須になっている。

国は「上手な医療のかかり⽅」と「セルフメディケーション」を推進している。「セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」 とWHO(世界保健機関)は定義している。体調不良のときや、ちょっとしたケガを自分で治療するときに市販薬を利用するセルフメディケーションは、過度な受診控えを防ぎつつ医療資源の効率的な活用を図ることにつながる。

現役世代の保険料は上がり続け、後期高齢者医療における窓口負担割合は見直され、今後は保険診療を行った際の医薬品に関しても、自己負担の見直しが検討される方針が示されている。ここまでの負担増の環境におかれていても、なお、解熱鎮痛薬の配布を手放しで美談のように受け止める節があるとしたら、その意識の“ズレ”はどこからきているのだろうか?

菅原 幸子 医薬品業界誌記者、『ドラビズon-line』編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すがわら さちこ / Sachiko Sugawara

2000年から20年にわたって医薬品メーカー、ヘルスケア卸、薬局・ドラッグストアを取材。現在は「ドラビズon-line」の編集長を務めている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事