ワクチン接種会場で「解熱鎮痛薬の配布」は美談か 日本人の低いヘルスリテラシーという根本問題

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「コロナワクチン接種会場には、希望者にアセトアミノフェン1錠を渡すところがあるという日本のニュースを見ました。医薬分業の観点から、医師は『熱が出た場合に備え、薬局の薬剤師と相談して1番適切な解熱剤を購入しておいてください』というような指示だけ出せなかったのでしょうか?

急速な接種率上昇が望まれる中、医師は使える時間内にできる限り多くの接種を施す必要があります。医薬品を渡す際には、その有効性・安全性に関する説明がいりますが、それを薬剤師に任せたほうが医師はコロナワクチン接種に集中できるのではないでしょうか?

ドイツでは国民医療において医師に調剤権がなく、医師がワクチン接種者や患者に医薬品を渡すことは法律で認められていません。コロナワクチン接種後の発熱の際、アセトアミノフェンは第1選択薬ですが、過去にアレルギーが出たなど同剤が合わない人もいます。1錠では熱が治まらない場合もあるかもしれません。薬局での相談販売で用法・用量の説明を受け、適切な解熱剤を1パック購入しておくほうが安心です。国による薬剤費の負担を軽減することにもなります」(アッセンハイマー氏)

予防的処方をしない方針の京都府医師会

一方、望ましい保険診療の姿を実践している地域もある。京都府医師会は、コロナワクチン接種の予防的アセトアミノフェンの処方をしない方針を決定し、各地域薬剤師会へ通達したという。

もちろん府医師会の方針であるため、強制力はないが、これに呼応する形で地域医師会にあたる「乙訓医師会」が理事会において同様の方針を決定。

実際に乙訓管内に3店舗の薬局を経営している梅ヶ丘薬局の福田幸彦氏は、「管内の医師からコロナワクチンの副反応が起きた場合には薬局薬剤師に相談するようにとの指導があったという患者が薬局に多く訪れました。解熱鎮痛薬の販売や、その後の体調変化の相談、受診勧奨などの役割を担っています」と話す。

市販薬のアセトアミノフェンは品薄ではあるが、医療用医薬品のアセトアミノフェンは通常どおり流通しているため、梅ヶ丘薬局では“零売”という仕組みも活用することで対応した。零売は医療用医薬品の中で処方箋を必要としない医薬品に関して、限定的に認められているもの。

必要最小限の販売しかできず、販売記録を残したり、薬剤師による対面販売などが条件になるが、今回の場合は継続的な体調管理や相談に乗るうえでも、この零売という仕組みが生きた側面もある。

もちろん、冒頭触れたようにアセトアミノフェンの市販薬のほか、イブプロフェンやロキソプロフェンなどの市販薬の入手に関して、薬局・ドラッグストアに相談することもできる。

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