新型コロナウイルスのワクチン接種が徐々に進んでいますが、その一方で「様子を見たい」「接種したくない」という人もいます。ワクチン接種は強制ではありません。それにもかかわらず、受けていない人に対して、職場で差別的な扱いをされるなど不利益が生じることが考えられます。会社はどう対応すべきなのでしょうか。社会保険労務士の大槻智之氏が解説します。
※以下で登場する「Aさん」は架空の人物で、Aさんのエピソードについては今後予想される職場トラブルをわかりやすく解説するためのフィクションです。
ワクチン接種を拒否して退職勧奨に発展
まずは以下のエピソードをご覧ください。
「副反応が怖いのでワクチンは絶対に打ちたくないです」
Aさんは、会社で実施する「職域接種」に参加しないことを決めました。ところが、Aさんがワクチン接種を明確に拒否してからというもの、こんな声を職場でチラホラ聞くようになりました。
「ああいう協調性がない人がいると困るよね」
要するに、新型コロナワクチンを接種することができるにもかかわらず、接種をしない人に対して批判的な態度を示す人が少なからず登場してきたのです。
「Aさんとは一緒に仕事したくないです」
職場内のワクチン接種率が上がるにつれてAさんに対する風当たりはますます強くなっていきます。最初は単に「頑固な人」だったのが、だんだんと職場の輪を乱す「問題社員」のような扱いをされるようになっていったのです。
ワクチンの話が出始めた当初は、Aさんと同じように「副反応が怖いから打ちたくない」という人もいたように思うのですが、実際に接種がスタートするとそうした人たちも接種を始めました。特に職域接種が始まると、少なからずその企業ではほとんどの社員が接種をすることになり、Aさんのようなワクチン接種をしない人が目立つようになってしまったのです。
こうして、Aさんはいつの間にか「自己中心的」「協調性がない」「面倒な人」のような目で見られるようになりました。そして、ついには人事部に呼ばれ、「ワクチンを打つか、退職するか選んでくれ」という退職勧奨にまで発展してしまったのです。
トピックボードAD
有料会員限定記事
政治・経済の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら