これは、いわゆる「ワクチンハラスメント(ワクハラ)」です。もちろん、法律上の定義などが存在しない造語なのですが、このワクハラが、パワハラにつながるリスクがあります。「Aさんがコロナになったら仕事に支障が出る」「Aさんがお客さんにコロナをうつしたらどうするのか」といった声が寄せられ、会社が誤った対応をとるケースもありうるのです。
また、ワクハラが横行してしまう理由には、「ワクチンを打ったからもう大丈夫」という誤った認識を持っている人も少なからず存在します。それはワクチンを打ちさえすれば自分がコロナに感染することも他人に感染させることもなくなるという勘違いから来ています。
ワクチンを打つことで発症や重症化を予防する効果は期待できますが、ワクチン接種が完了した後、その効果で発症はしなくても、ウイルスを持っていて、他人に感染させてしまう可能性は否定できません。
「強制にならないように、そうとう気を遣って推奨しています」
筆者にこう話してくれたのは、実際に職域接種を行っている企業の人事部の方です。社長からのトップダウンで職域接種を決めたため、何となく「接種率100%」を目指すことになったそうです。
ただ、すべての社員が積極的にワクチンを打ちたいわけではなく、接種は思うように進んでいないとのこと。人事部としては社長の掲げる「接種率100%」は接種の強制になりかねないため、社員には発表できません。そこで日々接種率を発表し、自主的に摂取を申し出てもらおうとしてはいるものの、すんなり100%接種とはならず、頭を抱えているそうです。
Aさんのケースでは退職勧奨の根拠がない
では、Aさんが受けたような退職勧奨は認められるのでしょうか。
そもそも退職勧奨はあくまでも社員の意思確認を前提とした「勧奨」なので、すぐさま違法になるといったことはありません。
ですが、強制するような言い方をしたり、何度も頻繁に行うなど退職に追い込んだりするようなやり方はパワハラであり、認められません。Aさんのケースでは「退職を勧奨する」こと自体に根拠がないので、パワハラととらえられる可能性は高いといえます。
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