転職&昇進「自分を高く売る人」のシンプルな発想 仕事力では差がつかない!「+α」でコレが必要
井上:本の中で、私はマーケティングには4つのステップがあると紹介しています。その最初に来るのが「市場を定義する=どの市場で戦うかを選ぶ」ことです。このステップを最初に置いているのは、ここを間違えるとあとで取り返しがつかないからです。
転職を考えるときの「市場」とは、「英語ができるエンジニアの市場」とか、「マネージメントができるマーケターの市場」などといった意味ですが、職種によっては業界も市場を分類する軸の1つになりえます。
年収は仕事のスキル・習熟度より、選んでいる市場によって決まります。価格は需要と供給のバランスによって決まるからです。レアなトレーディングカードに高値がつくのは、決して原価が高いからではないですよね。
どれだけ頭がよくてスキルがあり、なおかつ「やり抜く力」があったとしても、市場選びで失敗すると苦戦は必至です。小さくて成長もしていない市場でなまじ「やり抜く力」を発揮したら、むしろドツボにはまってしまうかもしれません。
つまり、自分の能力が発揮できる市場のうち、成長市場を選んで勝ち馬に乗るのが、キャリア形成のうえでは何にも増して重要だと言えます。より多くの人を幸せにできて、精神的にも金銭的にも多くの見返りがもらえるからです。
「100万人に1人になれ」にひそむ誤解
西村:どの分野・市場で戦うかについては、キャリア論ではあまり扱われていない印象です。
井上:おっしゃるとおりです。逆に、自分を見つめなおしたり、キャリアの棚卸しをして「やりたいこと」や「強み」見つける方法が紹介されることが多いようです。これには危険なところもあります。
「3つの分野で100人に1人の人材になれたら、掛け合わせて100万人に1人になれる」という話をよく聞きます。この考え方は素晴らしく、とても共感するのですが、誤解も広まっていると感じます。「100万人に1人」になること自体を目的にするべきではないのです。
100万人に1人のスキルを身に付けたからといって、それを求める人が誰もいなければ、「だからなんなの」という話になってしまう。たとえばトラルファマドール語が話せて、アンモナイトの鑑定ができるプログラマーはとても珍しく、おそらく100万人に1人もいないでしょう。でも、珍しいからといって、そのスキルを求める企業がなければ、大きな報酬を手にすることはできません。
こうした誤解が広まってしまうのは、個性が軽んじられてきた昭和の時代の反動という面もあるのかもしれません。
西村:希少性ではないとすると、大切なのは何でしょうか?
井上:私は「どれだけ多くの人を幸せにできるか」だと考えています。