いよいよ宇宙の「アマゾン化」が始まった意味 宇宙ビジネスの門戸は起業家に開かれている

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「私たちは両方をやり遂げなければならない。この地球上にいる私たちは今、多くの問題を抱えており、それらに対処する必要がある。それと同時に、私たちは絶えず未来に目を向ける必要もある」というわけだ。

しかし、そのどちら側にベゾスの関心が向かっているのかは明らかだ。1982年に高校の卒業生総代を務めたベゾスは、宇宙空間に浮かぶ巨大なスペースコロニーで何百万人という人々が生活できるようになることの重要性について話している。「地球を守るためだ」。地元紙マイアミ・ヘラルドはベゾスの当時の発言を紹介し、彼の最終目標は地球を「巨大な国立公園にする」ことにある、と書いた。

ベゾスの発言は今でも当時とほとんど変わっていない。

NASAと組んでリードを広げるスペースX

ブランソンはヴァージン・オービットという別会社を立ち上げて、小型衛星の打ち上げという新たな宇宙ビジネスを始めているが、マスクやベゾスと違って、太陽系に文明を広げるなどという壮大な構想をほのめかしたりはしていない。

一方、マスクの火星計画は突拍子もない小さな探究心から始まった。火星に植物を送って、火星で植物が育つのかどうか確かめたかったのだ。だが、たとえ小さな実験であっても、ロケットの打ち上げには莫大な費用がかかる。ロシアのロケットすら手の届くものではなく、それが理由でマスクは2002年にスペースXを設立した。

マスクは今、植物ではなく人間を火星に送り込もうとしている。スペースXは現在、火星への着陸を想定した大型の宇宙船「スターシップ」と、衛星を使って全世界をカバーする超高速ブロードバンド事業「スターリンク」の開発を進めている。スターリンクは、火星探査計画の資金を稼ぎ出すのが目的だ。

そうした目標を追いかけているうちに、スペースXは宇宙ビジネスの巨大企業になっていた。NASAは宇宙飛行士や貨物を国際宇宙ステーションに送り届けるのにスペースXのロケットやカプセル、カーゴ(無人補給船)に頼っている。民間だけでなく、政府や軍の衛星打ち上げにも、再利用可能なスペースXのブースターロケット「ファルコン9」が使われるようになっている。

NASAは最近、有人月面探査計画に使う月面着陸船をスペースXの「スターシップ」とする契約を結んだ。この案件にはブルーオリジンと別の防衛・宇宙航空企業ダイネティクスの2社も挑戦していたが、スペースXに競り負けた格好だ。弾道飛行の成功では仲間意識を全面に打ち出した大富豪たちだが、その裏では勝った負けたの勝負が繰り広げられている。 =敬称略=

(執筆:David Streitfeld記者、Erin Woo記者)

(C)2021 The New York Times News Services 
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