いよいよ宇宙の「アマゾン化」が始まった意味 宇宙ビジネスの門戸は起業家に開かれている

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こうした宇宙ビジネスは新たな始まりではあるが、1990年代の繰り返しともいえる。1990年代が始まったころ、インターネットはまだ政府の所有物であり、利用は一部の研究や通信に限られていた。ところが、1990年代の終盤には、まさにベゾスらのおかげで誰もが買い物できる場所になった。そして、その後の20年間でテック企業は巨大化。アマゾン、フェイスブック、グーグル、アップルは力を持ちすぎたとの懸念が党派を超えて広がるようになっている。

ネットはフロンティアからビッグビジネスになったわけだが、宇宙もこれと同じ道をたどり始めているのかもしれない。

アメリカ宇宙航空局(NASA)はここ何十年と、予算不足からアポロ計画のような壮大なプロジェクトに手を着けられずにいた。しかしトランプ前政権は、2024年までに再び月面に宇宙飛行士を着陸させるよう指示。バイデン政権も、2024年の期限は現実的でないとしながらも、月面再着陸の目標そのものは維持している。

実現するとすれば、今度はスペースXやブルーオリジンといった民間企業の助けを借りることになるだろう。1960年代のアポロ計画とは対照的に、次の月面着陸は民間への委託事業になるということだ。

規模の小さな宇宙ビジネスの門戸は、起業家たちに大きく開かれている。

初の商用宇宙ステーション建設を目指すスタートアップ企業、アクシオム・スペースのCFO、ウェスト・グリフィンが言う。「宇宙の現状、中でも地球の低軌道におけるビジネスは、インターネットの黎明期を彷彿とさせる」。

「宇宙への移住」を語るベゾスの最終目標

1960年代を通して続き、1970年代に勢いを失った最初の宇宙開発競争は、やる気満々で鼻息の荒いアメリカと、敵意だらけで魅力に欠けるソ連との戦いだった。アメリカはこの競争に勝利したが、当時はほかに集中して資金と労力を投じなければならない国内問題が山積みであり、そうした中で宇宙計画を進めることには強い批判もあった。

この点は、今もさして変わらない。違うのは、批判の矛先が個人に向かっている点だ。ベゾスに地球への帰還を許さないよう求めるネット上の請願活動には18万人の署名が集まった。マサチューセッツ州選出の民主党上院議員エリザベス・ウォーレンは次のようにツイートした。「ジェフ・ベゾスは直ちに、この地球上の問題に対処し、応分の税を負担すべきだ」。

ベゾスは19日、テキサス州の打ち上げ拠点で行われたCNNのインタビューで、こうした批判の「大部分は正しい」と述べた。

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