いよいよ宇宙の「アマゾン化」が始まった意味 宇宙ビジネスの門戸は起業家に開かれている
アポロ月面着陸52周年は、宇宙旅行にとっては小さな一歩でも、宇宙を目指す大富豪にとっては大きな飛躍となった。
ジェフ・ベゾスとリチャード・ブランソンは7月、宇宙空間との境界付近まで飛行し、その安全性と楽しさを鮮やかに証明してみせた。たとえ10分間でも問題だらけの地球から逃れることができれば、いい気晴らしになる。10分間というのは、ベゾスのブルーオリジンとブランソンのヴァージン・ギャラクティックが手がけている弾道飛行の所要時間だ。
だが、この壮観なイベントには、宇宙の「アマゾン化」が本格的に始まったという、もっと深いメッセージが込められていた。かつて宇宙は大国の独壇場だったが、今では巨大テック企業が触手を広げるようになっている。インターネットをビジネスにしている人々が、今度は月や星を消費者に売るようになるのだ。
「宇宙旅行」の売り上げはすでに1億ドル
アマゾンの創業者で、現在も同社の筆頭株主であるベゾスは7月20日、弾道飛行を終えた後の記者会見で、ブルーオリジンの営業が始まったことを明らかにした。弾道飛行の搭乗チケットは一般に販売されていないにもかかわらず、売り上げはすでに1億ドル(約110億円)に近づいているという。ベゾスはチケットの単価にはコメントせず、こう言った。「需要はすごく、すごく強い」。
需要は、世界中のメディアがテキサス州ヴァンホーンに集まりベゾスの飛行を大々的に持ち上げる以前から、すでに存在していた。その約1週間にはブランソンが、ニューメキシコでベゾスが計画していたのと同様の飛行を成功させていた。ベゾスのイベントは周到に練り上げられ、「宇宙飛行」の世界最高齢・最年少記録を更新する同乗者が選ばれた。さらに慈善活動に2億ドルの寄付を行うことも披露された。
競合するスペースXのCEOで、ベゾスの宇宙計画に懐疑的な態度を見せることもあるイーロン・マスクでさえ、祝福の言葉を贈らざるをえなくなった。「弾道飛行一番乗り」を自慢できる立場にあるブランソンも、マスク同様にベゾスの飛行成功を祝福した。マスクは、ブランソンの「宇宙船」打ち上げに立ち会っている。