もう地味とは言わせない!「進化系おはぎ」の正体 「映えておいしい」おはぎが続々登場している

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日販時代にアマゾンとの取引を担当したことから、小売り企業の原理原則を学ぼうと自ら経営塾に5年通った。その中でアメリカ視察があり、訪ねたサンドイッチチェーンで接客する老夫婦の笑顔に魅了され、このような笑顔で働ける会社を作り社会に貢献したい、と独立を考えるようになったという。

日本人があまり本を読んでいないという問題意識から日販に入ったが、「本が売れないのは、本自体に原因があるのではなく、1人ひとりに自分と向き合える時間など、日々の暮らしに安らぎの時間や余裕が少ないから」と気づく。こうしたゆとりを持てるサービスを提供したいと考えるようになった。

起業での紆余曲折は「プラス」

当初は家族から起業計画を、「路頭に迷うと困る。ダブルワークをしながら挑戦するなら認める」と反対された。そのため、会社員との二足のわらじを履き、人脈と土地勘のある地元での開業を目指した。会社の規定でアルバイトは禁止されていたが、会社経営は禁止されていなかった。開業資金は自己資金350万円だけ。投資、回収のサイクルを考えれば、可能なのはテイクアウトしかなかった。

落合社長の場合、紆余曲折を経て起業したことはプラスに働いた。勤めた先で知り合った人たちとは良好な関係を築いている。また、開業資金が少なかったにもかかわらず、年2店と速いペースで店を広げられたのは、日販と蔦屋書店の合弁会社MPDの協力を得られたからだ。

「OHAGI3(おはぎさん)というフランチャイズ業態のビジネスパートナーとして、不足する人材や店舗運営の資金を注入していただく、フランチャイジー契約を結びました。そのうえで、当社は商品開発やブランディングに注力しています」と落合社長。

すしやラーメン、最近ではカレーやぎょうざなど、これまでいろいろな日本食が世界デビューを果たし、受け入れられている。ベストセラーになった『英国一家、日本を食べる』の著者のマイケル・ブース氏など欧米の文化人が日本食にハマる現象もある。

和菓子についてはすでに、虎屋がパリに進出している。「豆が甘いなんて」とあんこを敬遠する欧米人は多いが、すしだって昔は「ナマで魚を食べるなんて」と言われていた。おはぎにハマる欧米人も、これからは出てくるかもしれない。近年、グルメの世界で、外国の食文化を積極的に受け入れる機運は高い。やがて、おはぎが世界を席巻する時代が訪れるかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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