「がんばり過ぎる人」ほど長生きできない理由 ある日、パニック障害に陥った仕事人間の告白

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後に厚生労働省の事務次官に抜擢された村木厚子さんは、54歳の頃、いわゆる「郵便不正事件」に巻き込まれた。主任検事の誤認逮捕によって自由を奪われ、5カ月間勾留された。

その後彼女にまったく問題がないことがわかり、彼女は官僚としての最高位の次官まで昇進したのだ。

ぼくは、NPO「がんばらない介護生活を考える会」というのを作って、毎年新しい介護技術の講演会を東京で行っているが、厚生労働省が後援をしてくれている。

村木さんが挨拶にやってきてくれた。5カ月間自由を奪われている間、ぼくの『がんばらない』を読んだという。

東京地検特捜部の辣腕検事だった田中森一さんという人がいる。その半生を綴った『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』(幻冬舎)はベストセラーになったのでご存じの方も多いだろう。

彼はバブル全盛期、検事から弁護士へと転身。アウトローの顧問弁護士となり、“闇社会の守護神”とまで呼ばれるようになる。かつての特捜部の仲間と敵味方にわかれて丁々発止とやり合っていたが、彼自身が逮捕され、刑務所に入ってしまった。

彼は、貧しい中で苦学をして大学に進んだ。そういうこともあったのだろう。獄中で「貧しい子ども達に勉学のチャンスを与えたい」と基金を作り、奨学金制度を作って、多くの子ども達にチャンスを与えようとしていた。

ぼくは、そんな彼の行動を見て、彼と雑誌の対談をしたのだが、なんと彼は刑務所で拘束されている間、『がんばらない』を読んだという。その後、ぼくの本を全部読み切ったという。

ぼくの本の中の「笑うことが大事」と書いてあるところを読み、刑務所内で1人で笑っていると、「笑うな」と監視から注意されたという。腹を抱えて、ぼくは笑ってしまった。そうやって、心が崩れるのを防いでいたのだ。

息を長く吐こう

「がんばらない」という肩に力を入れない生き方が大事なのだ。ミッドライフ・クライシスに陥った時、まずは、副交感神経を刺激するためにゆっくり運動をすること。

『ミッドライフ・クライシス』(青春出版社)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

自律神経と呼吸は密接に関係している。しっかり息を吐かないと、深く吸うことができない。吸うことよりも吐くことを意識することが大事だ。ぼくは時々、吸う時間の倍になるようにゆっくり吐くことを心掛けている。これで自律神経のバランスがよくなる。

自律神経はライフステージにおいても波がある。30代〜50の働き過ぎ世代では交感神経優位になりがちであり、がんばらない時間を時々つくる60代以降のリタイア世代は、副交感神経に偏りがちになる。60代になったら、むしろがんばったほうがいいかもしれない。

まずは今の自分の生活を見つめ直して偏りを直していこう。よく働き、よく休む。このよく休むが大事。メリハリのある生活を意識しながら交感神経と副交感神経を上手に切り替えて生きる。これこそが中年期の生き方にとって大事なのだ。

鎌田 實 医者・作家

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かまた みのる / Minoru Kamata

1948年東京生まれ。医師・作家。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任、以来40年以上にわたって地域医療に携わる。現在、諏訪中央病院名誉院長。日本チェルノブイリ連帯基金理事長、日本・イラク・メディカルネット代表として、被災地支援にも精力的に取り組んでいる。2006年、読売国際協力賞、 2011年、日本放送協会放送文化賞を受賞。ベストセラー『がんばらない』(集英社)をはじめ著書多数。近著に『相手の身になる練習』(小学館)、『70歳、医師の僕がたどり着いた 鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)などがある。

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