KDDI田中社長、「僕の計画をすべて話そう」 シリーズ「これからの通信」 KDDI(前編)
――周波数帯ごとに、基地局の配置や密度が異なると思いますが、異なる場所に設置された基地局を同時に捕まえてのキャリア・アグリゲーションも可能になっているのでしょうか。
現在、KDDIが実施しているキャリア・アグリゲーションは、今は同じ場所に設置された基地局を束ねてのものです。しかし、将来はもっと自由度高いネットワーク設計ができるようになります。異なる場所にある基地局同士がコミュニケーションしてのキャリア・アグリゲーションも、そう遠くないうちに導入できます。そうすれば、確保されている基地局の場所が異なるUQのWiMAX基地局とのキャリア・アグリゲーションにも、なおさら障害がなくなります。
もっとも、基地局建設が必要なケースを除けば、新しい技術の導入は各社横並びというのが実際のところです。あとはどれだけ投資をして、ネットワークを作っていくかという話ですね。キャリア・アグリゲーションが有効とはいっても、どの周波数帯もまんべんなく混雑している状況では、混雑の平滑化というキャリア・アグリゲーションの利点が高速化につながりません。帯域に空きがなければ、どう工夫してもそれ以上は流れませんからね。
――となれば、次はLTE-Advancedに向けて新技術の導入競争となるのでしょうか。
割り当てられた周波数を可能な限り活かすという意味では、複数の基地局が協調動作するCoMP(Coordinated multipoint transmission/reception)や異なるセル同士が協調して電波干渉を抑えるeICIC(enhanced Inter Cell Interference Coordination)といった技術の導入や”使いこなし”が重要になります。それによって実効速度を上げれば、詰まりも緩和できます。ただ、こうした技術はみんな同じように必死で取り組んでますから、大局を見据えるならば、そう大きな差はありません。
たとえば、韓国などは国際標準が固まる前にスタートさせてノウハウを集めています。その後、固まった規格が違う場合にどうするの?という話はありますが、率先して導入することで経験値が得られます。後から展開すれば、国際規格にきちんと沿ったものを展開できます。そういった順番の違いはあっても、どこも取り組んでいるテクノロジーそのものに違いがないのがLTEからLTE-Advancedへの流れですね。
その中でKDDIとしてどう取り組むかというと、まずはキャリア・アグリゲーションの優先順位が高かった。これは基地局展開が三キャリアの中でもっとも進んでいるのがKDDIだからです。800MHz帯はもちろん、2GHz帯も実人口カバー率で88%を超えてきましたから、このカバレージの広さを活かすために、まずはキャリア・アグリゲーションを行う。そして各周波数帯ごとに新技術で広帯域化に取り組みます。これがたとえばドコモさんならば、ひとつのバンドで広い周波数帯を持っていますから、キャリア・アグリゲーションの導入よりも1バンドでの速度を上げることに取り組んでらっしゃいますが、来年はキャリア・アグリゲーションを行ってくるはずです。それぞれの事情ややり方に合わせて進んでいます。
cdmaは2020年ぐらいまでは止められない
―― KDDIは第三世代ではcdma2000方式を採用しましたが、結果としてはマイノリティになってしまいました。日本では唯一ですし、海外を見ても少数派です。LTEのカバレージを急速に広げた背景には、なるべく早く3Gサービスを収束させたいという意図もあるのでしょうか。
自動車などへの組み込み通信モジュールなどもありますから、3Gサービスをそうそう簡単にはシャットダウンはできません。cdmaを早く止めてLTEに完全移行したいか、と言われればそういう部分もありますが、いずれにしろ利用者がいる限りは無理です。2020年ぐらいまでは、少なくとも止められないと思います。ただ、VoLTE端末への切り替えは積極的に行っていきます。
ひとつには電波の利用効率が高いLTEで音声を捌けることが一つ。それによって同じ音声トラフィックなら、3Gを縮退させLTEに回すこともできる。もうひとつはやはり音質です。これは明らかに良くなる。音声呼び出しから端末への接続時間も短くなる。cdmaを止めることよりも、そうしたVoLTEの利点を活かせることの方がモチベーションとしては大きいですね。加えてデータと音声が一緒に流れることで、新しいサービスが開発できるんじゃないかな?という予感がしています。
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