――cdmaはデータ通信と音声通信が同時には行えない仕様になっていたので、その考えは理解できます。しかし、UMTS(W-CDMAのこと)であってもデータ通信と音声通信の同時利用は可能でしたよね。
UMTSのコンカレンシー(並列性)な部分は、実際にはフォールバックなどもあって利点を生かせていません。昔からUMTSで通話中にもデータが裏で流れているのが利点だと言われ続けてきましたが、しかし今のタイミングで言えば、LTEと3Gの間を行き来しますから。しかし、VoLTEならば同じLTEネットワークの中を音声が同時にIPで流れるわけです。これならば昔、企業向けに流行ったユニファイド・コミュニケーションを、ひとつの携帯端末で提供可能になります。
新しい使い方が生まれることに期待
――確かにユニファイド・コミュニケーションという考え方は、VoLTEを活かす上でのキーワードになりそうです。コンシューマ向け端末でも応用領域があるでしょうか。
具体的に”これだ!”というような用途を見つけているわけではありませんが、これだけ通信回線を通じたサービスが多様化し、回線の帯域も広がり、レイテンシーも下がりました。端末はどれを使ってもサクサクと動きますし、どのクラウドサービスを使う場合でも、アプリを通じて簡単に使いこなせます。こんな時代にまで進化したのですから、何か新しい使い方が生まれるのではないか、という期待は強く持っています。
専門用語が多く、理解しにくかったかもしれないが、なるべくわかりやすく注記を入れた。「雰囲気」はつかむことができたのではないかと思う。元々、インフラ整備を担当してきた田中社長らしく、ネットワーク整備についての考え方については、かなり深い部分まで話をしてくれた。
ポイントは2.1GHz帯の人口カバー率を上げている背景に、キャリア・アグリゲーションのサービスエリア拡大を見据えている点だ。ヘビーユーザーが800MHz帯対応の最新機種に買い換えたためか、2.1GHz帯のLTEにしか対応しない旧機種の方が高速に通信できる場合がある、といった声もちらほら聞かれる。
しかし、今後キャリア・アグリゲーション対応端末の数が増えてくれば、両周波数帯の混雑度が平均化される。この機会に2.1GHz帯をきちんと整備していくことで、ネットワーク品質を高める、という狙いだろう。
田中社長の言うとおり、LTE世代では各社とも採用している基本技術が同じであるため、導入できるタイミングはほぼ同じと考えていい。その中で”どの順番で”、新しい技術に対応していくかは、携帯電話キャリアごとの事情によって異なってくる。
もちろん携帯電話網は基地局側の整備だけで成り立っているわけではない。組み合わせる端末に対する考えや、WiFi活用に関して、あるいはバックホール(基地局がIPトラフィックを落とし込んでいる固定通信回線)、SIMフリー化に対するスタンスも重要だ。後編では「デジタル製品が大好き」という田中社長らしく、KDDIが開発を進めているFirefox OS搭載端末などにも話が及ぶ。
著者フォロー
フォローした著者の最新記事が公開されると、メールでお知らせします。
ログインはこちら
著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。
ほんだ まさかず / Masakazu Honda
IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。
ログインはこちら