佐藤二朗「脇役でも見る人の心を奪う」魅力の正体 ひきこもりから仏まで演じる八面六臂の名脇役

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逆に、逃げたことを悔やむ父を演じたのは『わたしたちの教科書』(2007年・フジ)。女子中学生(志田未来)が学校の屋上から転落死したことが物語の発端。いじめを苦に自殺した可能性から、主人公の弁護士(菅野美穂)が動き出す。なぜなら志田は菅野の娘(元夫の連れ子)だったから。いじめをひた隠す学校、事なかれ主義の教師たち。菅野は孤軍奮闘、裁判で真相を追及していく社会派ドラマだ。

二朗は地味で覇気のない教師役。教師でありながら自分の娘(波瑠)は反抗期で家出中という悩みを抱えている。きっかけは二朗にあった。波瑠は高校の教師に胸を触られ、抵抗して殴ってしまう。父は同業者の手前、抗議するのではなく、その破廉恥教師に対して娘を謝らせたのだ。そりゃ娘、絶望するわな、家出するわな。

「黒いものを黒いと言えなくなる。白いものを白いと言えなくなる。それが大人だ。それが俺だ」と、心の底から悔やむ二朗。それを機に、「いじめ裁判」で重要な証言をすることを決意。法廷で泣きながら真実を吐露するのだ。教師である前に父親、父親である前に人として、己を悔い改めるキーパーソンを演じた。

のぞきみを後悔する二朗

もうひとつは香取慎吾主演『誰かが、見ている』(Amazonプライム)での父親役。三谷幸喜が猛烈に滑ったという酷評を聞いたが、3話4話と観続ければ失笑ポイントがたまっていくお得なシステムである。

二朗は香取を壁の穴からのぞき見する隣家の父親役。香取に興味をもった娘(山本千尋)は盗撮動画を勝手に配信してしまうが、二朗はのぞき見を始めた自責の念がある。時に電気屋のフリをしたり、メイド姿で食いかけのピザを配達したりで、娘をかばおうともする。シットコムが苦手な人には勧めないが、ここでは珍しくまっとうな父親だ(いや、のぞき・盗撮は犯罪なので、まっとうではないか……)。

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