佐藤二朗「脇役でも見る人の心を奪う」魅力の正体 ひきこもりから仏まで演じる八面六臂の名脇役

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俳優・佐藤二朗の魅力の真髄とは?(写真:Arnold Jerocki/Getty)

画面のどこかにひっそりたたずんでいるだけでも、妙に気になる。大柄だし、立派な骨格の顔だが、不思議と圧はない。口を開けば、文節と息継ぎと躊躇という概念をすっ飛ばして、脳内言語を一気に吐き出す。でもその文言には独特のリズムがあり、語尾もなんだかかわいい。結果、威圧感も威厳もなく、ふんわりと優しさが残る。

見るからに穏やかで優しい、のではない。後味がとても優しい。そんな優しさでできている俳優・佐藤二朗について、書いてみようと思う。

2時間ドラマにローカル局ドラマ、脇役で細かくリアリティや笑いを追求してきた職人気質。テレ東の「勇者ヨシヒコ」シリーズで、空に浮かんで好き勝手言って無茶ぶりする仏の役で爆発的に知名度を上げた。

福田雄一・遊川和彦・堤幸彦・三谷幸喜の作品に数多く出演し、いまやクイズ番組や教養番組のMCも務める八面六臂の活躍ぶり。今回は膨大な量の出演作品の中でも「優しさ」に的を絞ってみる。

「命令形をやわらげる」新しい方法

いきなり余談だが、今の時代は子供にも年下にも、そして夫婦間であっても敬語を使いつつある。そんな時代の空気感を読んでか、二朗は絶妙な命令形を駆使する。

「やめろ」ではなく「やめれ」、「観ろ」ではなく「観れ」。明らかに命令してはいるが、威圧感はなく懇願する愛らしさ、ふんわりやわらいだ印象になる。もちろん大の大人が使う日本語としては変だが、人柄が伝わってくる。

私が最も好きな作品は『幼獣マメシバ』(2009年)だ。ローカル局と配給会社が共同で制作、放送地域も予算もミニマムなドラマだが、柴犬の可愛らしさと二朗のひきこもりニート中年のマッチングが絶妙で、映画化&シリーズ化も果たした。

二朗が演じたのは、裕福な地主の実家に引きこもる35歳の一人息子・芝二郎。皮肉屋で屁理屈満タンだが、よく言えば裏表がない。近隣住民の醜聞をブログに載せる悪趣味があり、厄介者扱いされている。

父(笹野高史)が亡くなり、母(藤田弓子)は不甲斐ない息子の将来を案じて、ある策を実行。柴犬の子犬・一郎を残し、手がかりを近隣の人に託して自ら失踪したのだ。母に依存していた生活が一変、仕方なく人と接して母の行方を捜すことでひきこもりから卒業する、という物語だ。

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