コロナ禍で、国会審議の中心が感染対策になる中、いつも蘇貞昌行政院長(首相)と台湾中央感染症指揮センター(台湾CDC)指揮官の陳時中・衛生福利部長(厚生相)を、独特なハスキーボイスで舌鋒鋭く追及する議員がいる。頼士葆氏だ。
1998年から中国統一志向が強い政党「新党」から出馬して当選。のちに国民党に鞍替えし、議員生活15年以上のベテラン議員だ。議会では予算委員会に所属することから、感染対策におけるワクチン購入に、一段と声を張り上げ批判を展開。その姿は何度もメディアに映し出されていた。さすがにこんなにも強硬な議員が特権接種はしないだろう、ましてやアストラゼネカ製ワクチンを打つなんてもってのほかだろうと思われていたさなか、頼氏も接種していたことが明るみになった。多くの有権者があきれてしまったのは想像にたやすい。
「ワクチン受け取りは物乞い」と批判しながらも…
ちなみに日本人として忘れがたい元議員がいる。張顕耀氏だ。現在は「浪人」中だが、2018年に台北市長選で国民党の公認をめぐって先の丁氏と争った政治家だ。なぜ忘れがたいのか。それは、日本政府が台湾へアストラゼネカ製ワクチンを供給することを発表した際、「日本は本気で台湾を助けたいと思っているのなら、なぜファイザー・ビオンテック製あるいはモデルナ製を送らないのか。日本人がいらないと言ったアストラゼネカ製ワクチンを受け取るべきでない」とSNSで難色を示し、「台湾人はワクチンの物乞いに成り下がっている」との批判を展開してきたからだ。
ところが、である。5月28日には、そのアストラゼネカ製ワクチンを接種していたとメディアに暴露された。ただちに当局が捜査を開始し、病院と張氏にそれぞれ30万元と1万5000元(約6万円)の罰金が科せられたのだった。
相次ぐ国民党員の特権接種の発覚で、人々が国民党に持っていた腐敗のイメージが呼び覚まされてしまった感は否めない。ちなみに一部でこれら特権接種をした国民党議員らをマンガ『ドラゴンボール』のキャラクター「ギニュー特戦隊」にちなみ「AZ特戦隊」と揶揄し、皮肉にもアストラゼネカ製ワクチンの接種に及び腰になりつつあった高齢者へ、接種を促す最高のPR材料になっているという。
新型コロナワクチンをめぐって露呈してしまったダークなイメージを払拭できるのか、国民党に残された時間はあまりない。
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